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科学
突然変異とエピジェネティクス 大和田潔
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生まれた子供が大きくなり、大人になって、よく似た子供が生まれる。私たちは、当たり前のように感じています。両親のそれぞれの特徴を引き継いで、新たな生命になるというのは、自然の神秘の一つです。体の細胞が卵子と精子を経て受精卵になると、すべての臓器を一から作り直していくことができます。
ゾウの鼻の長さや、キリンの首の長さ、シマウマのしま、カメレオンの変色能力も、親から子へ伝えられます。ダーウィン・フィンチと呼ばれる小鳥は、住む島に適した体形とクチバシに変化し代々その特徴が保存されています。厳しい自然環境の中で淘汰(とうた)された特徴が伝えられ保存されていきます。
親から子供に遺伝子が引きつがれるときに、遺伝子が変化することを突然変異と呼びます。生存に有利な何らかの変化が遺伝子に突然起きると、子は生き残ることができて孫が生まれます。親が獲得した突然変異が、次の世代でも有利だと、その変化は世代を超えて保存されていきます。遺伝子の変化が定着したことになります。ゾウやキリン、フィンチなどはそうして体を変化させてきました。
遺伝子が書き換わる突然変異のような大変化がなくても、遺伝情報の変化が子孫に引き継がれるメカニズムが明らかにされてきました。エピジェネティックスと呼ばれるものです。私たちは、遺伝子のすべてを使ってはいません。不要な部分は、メチル化といった標識がつけられて使われないようになっています。遺伝子上の標識が遺伝することが、エピジェネティクスです。遺伝子自体は変化せず、読み出す方法が遺伝するわけです。
親の運動の海馬(かいば)への良い影響が子へエピジェネティック的に伝わるマウスの話を先週お書きしました。運動で変化した糖尿病に関わる遺伝情報が、エピジェネティック的に子に伝わることも報告されています。親が努力して運動して獲得した遺伝子の発現の変化が、子供に伝わり糖尿病に良い効果を持つといった可能性を示しています。これからお子さんを持つ若者たちが、運動好きな生活を心がけると、彼らの次の世代のメタボリックシンドロームの予防になるかもしれません。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)