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アジア市場に羽ばたくデザイナーたち シンガポール発、アジア・ファッション・エクスチェンジ2014
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会場に約700人が集まり、立ち見もでるほど大盛況だったドレスキャンプのショー。日本の流通大手「パルコ」の後押しでショー開催にこぎつけた=2014年5月17日、シンガポール(近藤陽子さん撮影)
クールジャパンのかけ声のもと、海外向けの文化発信が盛んになっている。そんな中、日本のファッションデザイナーたちは世界市場への発信拠点として、シンガポールに注目している。5月、シンガポールでのファッションイベントでコレクションを披露した日本人デザイナーたちの情熱と世界からの反響を、「The STYLE INSIGHT」の編集長で、ファッションジャーナリストの近藤陽子氏がリポートする。
赤道に近い都市国家、シンガポールはとにかく暑い。だから昼間は、Tシャツにホットパンツといったカジュアルな装いの若者たちが街にあふれる。やがて日が暮れ、涼しくなると女性たちはドレスに着替え、街に繰り出す。
そんなシンガポールが、今、本気でアジアのファッションのセンターポジションを狙っている。その中心的な取り組みの一つが、5月中旬に開催されたイベント「アジア・ファッション・エクスチェンジ」だ。2010年から年に1度、約1週間にわたりランウェイショーや展示会などを開いている。
経済成長著しく、アジアの玄関口としても存在感が高まるこの国でショーを開けば、今後のビジネスチャンスの拡大が見込める。販路拡大に向け、アジア市場にブランドを発信しようと、5月17日、東京のブランド「ドレスキャンプ」が、「アジア・ファッション・エクスチェンジ」の1部門である「アウディ・ファッション・フェスティバル」でランウェイショーを開催、14~15年秋冬コレクションを披露した。
ドレスキャンプのデザインは、オリジナルプリントを駆使した鮮やかな色彩表現と装飾性などに特徴がある。日本ではファッション高感度層からの支持が高い。ドイツの劇作家ブレヒトによる戯曲『三文オペラ』の世界観に、ルキノ・ビスコンティが志した退廃的なムードを加えた14~15年秋冬コレクションは、現地のファッション関係者やメディアから好評。ショーの直後から「非常にレベルの高いファッションだった」「オンラインショッピングは可能なのか」などといった感想や問い合わせが相次いだという。
デザイナーの岩谷俊和は、「シンガポールは柄物に抵抗がないし、ドレス文化もあるので受け入れられやすいのでは。今後は(現地の巨大ファッション企業)CLUB21と取引がしてみたい」と語り、意欲を新たにした様子だった。
ランウェイショーの傍ら、期間中には「ブループリント」という合同展示会も行われた。そこに初出展したのは大阪の「ロギーケイ」というブランド。「ロギーケイ」のデザインは、レディ・ガガが愛用するなど一見奇抜ながらも、実はリアルクローズとしても着られる独特のもの。その様子は、早速、アメリカ発の人気ファッション情報サイト「スタイルドットコム」や「ファッショニスタドットコム」などで取り上げられ、シンガポールのセレクトショップ「フロントロウ」や台湾のインターネットショップ「オリーブショップ」への卸しも決まった。
きめ細やかなディテールやこだわりの素材といった日本ならではの美徳は評価が高く、あとは値段さえクリアすればより販路が広がる気配を感じた。
一方、シンガポールは、欧米との連携にも力を入れており、今回、いくつかのブランドを招聘(しょうへい)し、ショーを催した。
セレブリティーやファーストレディーが顧客に名を連ねる米ブランド「オスカー・デ・ラ・レンタ」が提唱するアメリカン・クラシックは、ファッションに投資を惜しまないシンガポール、香港、タイの富裕層からの反応が良く、ショー会場はまるでサロンのような趣に。またネパール出身の「プラバル・グルン」は以前シンガポールに居住した経験があり、さながら凱旋帰国といった様相で、こちらも富裕層の注目を集めた。
ローカルブランドのショーで印象に残ったのは「アシュリー・イシャム」と「ハンセル」。どちらも英国でデザインを学んだ。「アシュリー・イシャム」のショーは台湾の人気俳優ゴッドフリー・ガオをゲストモデルに迎え、モデル全員が倒れ込むという奇想天外なエンディングの演出で会場を沸かせた。また「ハンセル」はシンプルなリアルクローズで若者からの支持が高い。これらのブランドには勢いを感じた。シンガポール発のファッションの波にも、今後注目が集まる予感がした。(WEBマガジン「The STYLE INSIGHT」編集長 近藤陽子、写真も/SANKEI EXPRESS)