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【台風8号】九州上陸へ 長野で土石流、男児1人死亡 解除後再び特別警報 運用に課題

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【台風8号】九州上陸へ 長野で土石流、男児1人死亡 解除後再び特別警報 運用に課題

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新潟・佐渡島でも大雨で土砂崩れが発生し、県道が一時通行止めとなった=2014年7月9日午後、新潟県佐渡市(大山文兄撮影)  台風8号は7月9日、東シナ海を北上し、進路を東寄りに変えながら九州に接近した。沖縄では、読谷村で1時間に96.5ミリの猛烈な雨を記録。気象庁は未明、沖縄本島地方への大雨、暴風、波浪の特別警報を解除したが、朝に大雨の特別警報を再び発表した。

 沖縄県によると、那覇市の安謝川(あじゃがわ)が氾濫し、車が水没。恩納村(おんなそん)で道路ののり面が崩れ通行止めとなるなど各地で被害をもたらした。午後に雨量が減少し、本島南部の一部地域は再び特別警報を解除されたが、特別警報の再発表について、気象庁は「これだけの雨になるとは予想できなかった」と説明した。

 雨は各地で強まっており、長野県南木曽町では大雨の影響とみられる土砂崩れが発生。4人が土石流に巻き込まれたとみられ、男児1人が死亡した。

 九州でも、大分市で信号待ちの女性(77)が風で転倒して骨折の疑いなど4人が負傷。新潟県佐渡市では、1時間の雨量が60ミリを超え、50年に1度の記録的な大雨となった。

 台風8号の勢力は次第に弱まっているが、長崎県の五島列島は風速25メートル以上の暴風域に入り、10日正午には熊本県の南部を中心とした半径130キロの円内に進む見通しで、九州を横断して西日本に向かう恐れが高くなっている。

 九州では7月に入り、梅雨前線の影響などによる大雨が続き、地盤が緩んでいる所がある。気象庁は、土砂災害などに厳重な警戒を呼び掛けた。

 気象庁によると、10日午後6時までの24時間予想雨量は多い所で四国400ミリ、九州300~350ミリ、近畿と東海250ミリ、北海道と東北、関東甲信120~130ミリ、北陸80ミリなど。その後の24時間も近畿と東海200~300ミリ、四国100~200ミリと見込まれる。

 ≪解除後再び特別警報 運用に課題≫

 沖縄本島地方に出ていた特別警報は7月9日未明に全て解除されたが、気象庁は9日朝、再び大雨特別警報を発表した。気象庁は発表基準が複数あることに加え、「解除時点で後の大雨を予想できなかった」と説明するが、発表と解除の“乱発”は住民の混乱を招く恐れもある。特別警報の運用面の課題が露呈する一方で、専門家からは「特別警報だけを防災情報と受け取ってはいけない」と受け手側の姿勢を指摘する声も聞かれた。

 「予想できていれば解除しなかった。災害が起きないような状況で特別警報を続けると、情報としての効果が薄れてしまう」。気象庁の海老原智予報課長は、運用の難しさを口にした。

 「台風」から「大雨」基準へ

 特別警報は重大な災害に警戒を呼び掛ける目的で昨年(2013年)8月から運用開始。「数十年に1度の強さ」を基準とし、昨年(2013年)9月に台風18号に伴う大雨で福井、滋賀、京都の3府県に初めて発表された。ただ、翌10月に発生した伊豆大島(東京都大島町)の土石流災害時には特別警報は出されなかった。

 雨量では基準に達していたが、基準の一つの「府県程度(都道府県)広がり」がなかったためで、政府は「大丈夫だと思った人がいたかもしれない」として改善は不可欠との認識を示している。

 今回の発表基準は現状のままだったが、台風の勢力などを基準に発表に踏み切ったのは初。また、いったん解除された地域で再び特別警報が出されたことも初めてとなった。

 気象庁によると、9日未明までの特別警報は、中心気圧と最大風速を参考にする「台風の基準」で発表した。暴風や大雨などについて警報レベルに達し次第、(7月)7日以降、特別警報を順次発表した。

 ただ、海面温度が予想より低くなり、見込みより勢力が強まらなかった。9日未明には勢力を弱めて「台風の基準」を下回ったため、9日午前2時52分に一度は全て解除された。

 その後、台風に流れ込む発達した雨雲が沖縄本島にかかり、9日午前5時ごろから強い雨が降った。気象庁によると、この大雨は台風外側の積乱雲に次々と湿った空気が流れ込み、同じ場所で積乱雲が発生し続ける「バックビルディング現象」が原因とみられる。

 気象庁は9日午前7時31分、地点ごとの3時間、48時間の雨量などを目安とする「大雨の基準」で再び特別警報を発表した。

 いろいろな情報に注意

 静岡大学の牛山素行教授(災害情報学)は「再び発表することは、十分あり得る。(台風と大雨それぞれ基準を設けている)制度の設計自体はおかしな考え方ではない」と説明。ただ、特別警報の説明・普及の過程で、「特別警報は数十年に1度のときに出る」という話が強く印象に残り、住民に違和感を持たれた可能性はあるという。

 特別警報で避難勧告や避難指示を出し、直接住民に注意喚起する自治体はどのように受け止めているのか。那覇市市民防災室の金城竜人室長は「難しい問題ではあるが、今回は完全に安全となるまで解除を引っ張っても良かったのではないか」と話す。また「特別警報が乱発され、それに慣れてしまっては本来の目的からそれてしまう」とも述べ、気象庁に発表時の慎重な判断を求めた。

 牛山教授は情報を受け取る側の姿勢にも言及。「特別警報が解除になったら、安全というわけでは決してない。これも、特別警報だけが防災情報であるかのように受け止められている弊害。いろいろな情報が出ていることに注意を向けることが重要」としている。(田中俊之/SANKEI EXPRESS

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