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【ソーシャル・イノベーションの現場から】サッカー教室、ユニホーム寄贈が第一歩
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ミャンマーのエーヤワディー地域の学校で開催したサッカー教室の終了後、参加した子供たちは感謝の気持ちを込め、セレッソ大阪スクールの池田昌弘コーチを胴上げ。「いけちゃん、いけちゃん」のコールが鳴り止まなかった=2014年6月29日、ミャンマー(日本財団撮影) ≪スポーツでミャンマーの村の子供たち応援≫
サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で、日本代表の1次リーグ敗退が決まった4日後の6月28日。ミャンマーのヤンゴン市にあるトゥワナスタジアムで、Jリーグのセレッソ大阪とミャンマー代表との熱戦が繰り広げられた。
蒸し暑く滝のような雨も降るという、まさに東南アジアの雨期らしいコンディションのなか、1万2000人の観客が歓声を送った。試合を制したのはセレッソ大阪。1-0での勝利だった。
試合は、日本とミャンマーが外交関係を樹立してから今年で60周年を迎えたことを記念し、「日本財団チャリティマッチ ヤンマーカップ」として開催された。
このチャリティマッチは、ミャンマー都市部の急速な経済発展に伴い、貧富の差が広がる農村や山岳地域の村々の子供たちと、日本の企業をつなげたいという思いから始まった。
日本が主導して、子供たちにスポーツを通じた教育支援を行うことで、地方にも経済発展の恩恵が少しでも行き届くようにという思いで賛同者を呼びかけたところ、日本とミャンマーから20社以上の企業が集まった。チャリティマッチを通じ、「新たな学びとなり、そして楽しめる」活動のキックオフとなった。
この企画に最も早い段階で賛同してくれたのは、ミャンマー出身のファッションデザイナー渋谷ザニー氏。約1年前の東京での企画会議にアドバイザーとして参加して以来、何度も会議に出席。ザニー氏を含めた企画メンバーはミャンマーへの思いを共有した。
「日本財団はこれまでにミャンマーの山岳、農村地域で200校以上の学校建設を支援してきている。それを活用しない理由はない。せっかくの基盤を生かし、スポーツや文化活動を通じて、アジアの未来を担うミャンマーの子供たちの教育をもっと活性化しようよ。ほら、運動会とか文化祭って子供がとっても成長する要素でしょ?」
ザニー氏の言葉はとても分かりやすくストレートだ。まさに企画メンバーの気持ちを表してくれた。
ザニー氏とチャリティマッチのスポンサー企業数社の担当者、セレッソ大阪スクールコーチ2人は試合翌日の朝5時、数台のワゴン車に分乗し、エーヤワディー(イラワジ)地域に向かった。1泊2日の日程で5つの学校を訪問し、各企業のオリジナルサッカーユニホームやボール、ミニゴールなどを寄贈すると同時に、コーチによるサッカー教室を開いた。
粘土質の土壌に雨季が重なり、どの学校でも田んぼのようなぬかるみの中でのサッカーとなった。各企業からは30代の若手社員のほか、役員も参加したが、サッカー歴はさまざまで、未経験者もいれば、国体出場経験者も。
「みんなでプレーする雰囲気にのまれて、白いパンツに泥がたくさんはねちゃった。まさか大人になってからイラワジの子供たちとサッカーを一緒にするなんて思ってもみなかった。色々な発見がありましたよ」と、ザニー氏。
ピッチで大活躍のセレッソ大阪スクールコーチ2人は関西仕込みのギャグを連発。サッカー教室の子供たちだけでなく村全体が最高の盛り上がりと一体感を見せた。女の子たちにはバドミントンやバレーボール教室も開かれた。スポーツ支援だけでなく、経済的に困窮している成績優秀生徒には奨学金が提供された。
ただ、今回のサッカー教室の開催やユニホームなどの寄贈、奨学金の提供といった活動は、サッカーの試合でいえばまだ前半5分が終わったほどの段階にすぎない。村の子供たちがスポーツを通じた教育支援の恩恵を受けられるようになるのは、まさにこれから。スポンサー企業や協力者が、村を再訪し支援を継続できるような仕組みが必要だ。ここは、チャリティマッチでつながったネットワークの生かしどころだ。つながったのはお金だけではなく、協働した組織や人であり、これは貴重な財産である。
協力企業の一つである全日本空輸(ANA)が子供たちに贈ったユニホームを手掛けたザニー氏には、日本ミャンマー協会からもユニホームデザインの依頼があった。これはミャンマー北東部シャン州の子供たちに寄贈される予定だ。
ザニー氏はデザイン案を練りつつ、今後の抱負についてこう語った。
「国の発展は経済発展だけでは成し得ません。国民ひとりひとりの成長した姿こそが、真の国の発展だと考えています。だからこそ、スポーツ、文化教育の支援は若者の人格形成に大きく役立つ。若者への教育支援こそ国家を形成するために一番重要なことだと考えています」
日本財団では現在、シャン州のユニホーム寄贈校によるサッカーのトーナメント戦を開催し州都のスタジアムで決勝戦を行う企画を検討中。これからもザニー氏らとともに、企業が参加できるミャンマーの村の子供たちとのイベントを企画していく。(日本財団 国際協力グループ 中嶋竜生/SANKEI EXPRESS)