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【世界自転車レース紀行】(17)中国 高地で繰り広げる過酷な戦い
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3000メートル級の山岳がたくさん盛り込まれた「ツアー・オブ・青海湖」。循化サラール族自治県からスタートした第8ステージ、最高地点海抜3594メートルの達里加山を登っていく=2014年・7月13日、中国・青海省(田中苑子さん撮影) 7月6日から19日まで、アジア最高峰のステージレース「ツアー・オブ・青海湖」が中国で開催された。レース名のとおり、中国内陸部の青海省にある中国でもっとも美しい湖といわれる青海湖の周囲を使って行われ、途中1日の休息日を挟む14日間、全13ステージにわたる壮大な大会だ。同時期に開催される世界一の自転車ロードレース、「ツール・ド・フランス」の開催期間は3週間だが、それと競い合うかのように近年、ツアー・オブ・青海湖の開催期間は徐々に延長され、アジアのレースとしてはもっとも長い開催期間を誇る大会となった。
今年で13回目で、アジアでは比較的歴史の長い部類に入るが、何よりも特徴的なのは開催地の標高にある。起点となる西寧市の海抜は2275メートル、青海湖は海抜3200メートル、山岳ステージでの最高地点では海抜3858メートル、そして全レース区間を通しての平均標高は海抜2265メートルと非常に高い。例えて言うなら、富士山の五合目から山頂付近で連日選手たちはレースを繰り広げることとなり、当然酸素濃度が薄いために選手によってはパフォーマンス維持に苦労し、海抜2400メートルを超えると発症するという高山病を患う関係者も少なくはない。
また標高の低い市街地では30度を超す暑さに見舞われ、逆に山間部では天気が悪いと気温は10度以下となり、選手は凍えながら険しい山道を下るというなんとも過酷なレースだった。
≪景色一変 美しい湖のあとは…≫
私たち一行はそれぞれの出発地から上海を経由して、青海湖の玄関口となる青海省の省都、西寧市へと降り立った。高地順応が必要となるため、通常は大会前日に現地に入ることもある。しかし、今回はどんなに遅くとも2日前には現地に入り、選手たちはメディカルチェックを受け、軽いトレーニングをしながら、身体を高地に慣らしていった。大会3日目になると本格的な山岳がコースに組み込まれ、険しい山を登って海抜3000メートルを超える青海湖へと到着した。
広大な中国のちょうど中央に位置する青海湖は、中国最大の塩湖で、菜の花畑に囲まれた美しい湖だ。その周囲は、北京や上海など、私たちが連想する中国の大都市のイメージとは大きく異なり、モンゴル族やチベット族などの少数民族が多く暮らし、雄大な自然の中でゆったりと羊や牛が放牧されている土地だ。
また青海湖から離れると、回族と呼ばれるイスラム教を信仰する少数民族の自治州が連なり、森林限界を超えた荒々しい岩山の中に、中央アジアや中東を思わせるような立派なモスクがそびえ立つ。
初めてこの大会に参加した関係者たちは「ここは一体どこなんだ?」と口をそろえた。
そして、青海湖を1周すると、一行は青海省から出て、甘粛省の天水市や蘭州市などの活気のある地方都市に立ち寄ったが、どこの街に行っても、大勢の住民たちが沿道に集まり、好奇心旺盛にレースの行方を見守った。
厳しいレースとなり、182選手がスタートラインに立ったが、2週間のレースを終え、最終ゴールにたどり着いた選手は127人だった。総合優勝したのは、登坂でもスプリントでも抜きん出た強さを誇ったカザフスタン人のイリヤ・ダビデノック(アスタナコンチネンタル)。日本人選手は4人(ヴィーニファンティーニ・NIPPO)参加し、第1ステージで宮澤崇史が5位、最終ステージで黒枝士揮が6位という好結果を残した。(写真・文:フリーランスカメラマン 田中苑子(そのこ)/SANKEI EXPRESS)