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日本の歌は「未来への贈り物」 歌手 多田周子さんインタビュー
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「未来への贈り物」をテーマに日本の歌に向き合う歌手の多田周子(ただ・しゅうこ)さん(大山実撮影) 夏の訪れとともに思い出されるのは、遠い日の記憶ではないだろうか。長い休みのうちに目にした幼い日の光景は、胸の奥で静かに響く叙情歌の世界そのままの情感をたたえている。歌手の多田周子さんは「未来への贈り物」をテーマに、精妙な言葉の響きを織り込んだ日本の歌と向き合って、温かな詩情を運ぶ。
産経新聞1面の題字にスマートフォンやiPadをかざし、動画やスライドショーが見られる「かざすンAR」では、多田さんが歌う「浜辺の歌」「赤とんぼ」、オリジナル曲「ありがとうふるさと」などを美しい日本の映像とともに聴くことができる。いつの時代も変わらない日本人の心を運ぶ清新な歌声は、幅広い世代で大きな共感を呼んでいる。
「ダウンロードという言葉さえ遠い世界のようにされていた年配の方も、デジタル機器を身近なツールとしている若い世代の方も、気軽に利用され、音楽への興味を深くされていることに心が動かされます」と多田さん。
多田さんは兵庫県たつの市に生まれ、声楽家の母が日常の折々に口ずさむ叙情歌を耳にして育った。京都府立芸術大学で声楽を学び、オーストリアのモーツァルテウム音楽院で博士号を取得した。
「母の背に負われ、ある時は手を引かれて聴いた日本の歌の一つ一つが私の原点です。春になって菜の花が咲くと母は『おぼろ月夜』を歌い、日が暮れて山にかすみがかかり、月が上がる様子を指さしながら、歌に描かれている世界を教えてくれました。どの歌も強い共感を伴って私の中にあり、誰のまねでもない私だけのオリジナルとして響いています」
川端康成は少年時代、「源氏物語」や「枕草子」など本を手当たり次第に読んだことを「新文章読本」に記している。言葉や文章の調子に心を引かれた遠い日の記憶は、長じて文学者となった自らの胸にいつまでも途絶えることのない歌のように響き、創作に大きな影響を与えているとする。多田さんの郷里、たつの市が誇る詩人の三木露風は、川端と同じく少年時代に両親と離別する経験を持つ。代表作の「赤とんぼ」には、幼い露風が見た故郷の心象が記されている。
「露風がつづった夕焼けの情景は、私の記憶とどこまでも重なっています。叙情歌とは、日本の情景や歴史を歌いあげるとともに、私が見聞きし、感じたものを織り込んでいくものだと思います。歌手は確信に満ちた本当の本物が自身になければ歌うことができません。私は日本の心を大切に抱いて、みなさんの胸の中にある思いと響きあえれば幸せです」(文」谷口康雄/撮影:大山実/SANKEI EXPRESS)
■水彩画も 来月個展 新旧の叙情歌を集めたCD「みかん」(KIMミュージックエンタテインメント)のブックレットには、自ら筆を振るって歌の世界を描いた絵が収められている。遠い記憶を呼び覚ますような水彩画を集め、8月27~31日には「ギャラリーやさしい予感」(東京都品川区上大崎2の1の25)で個展を開く。