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「リスク覚悟」苦渋の未承認薬投与 エボラ感染 アフリカ人に初めて

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「リスク覚悟」苦渋の未承認薬投与 エボラ感染 アフリカ人に初めて

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エボラ出血熱の感染状況=2014年8月13日現在、世界保健機関(WHO)による。※死者は感染例、疑い例に含まれる。  エボラ出血熱が猛威を振るう西アフリカのリベリアで、未承認の治療薬が初めてアフリカ人に投与された。効果に期待が高まるが、数量は圧倒的に不足。安全性や副作用への懸念は消えず、現場の医師らの判断は、救命と倫理のはざまで揺れ動く。

 「モルモット批判」も

 「これは万能薬ではない。患者はリスクを負わねばならないのだ」。ロイター通信によると、リベリア保健省高官は8月13日、米製薬会社が開発中の治療薬「ZMapp」の到着直後、沸き立つ世論にくぎを刺した。

 ZMappは、リベリアで感染した米国人2人に投与されて症状の改善が見られ、注目が集まった。世界保健機関(WHO)は12日、未承認薬を条件付きで投与することは「倫理にかなう」と容認方針を発表。合わせるかのように、カナダ政府が臨床試験の済んでいないワクチンを提供する方針を示し、米製薬企業が未承認薬の臨床試験を急ぐ考えを表明した。

 本来、薬の本格的使用は、安全性の確認が不可欠。WHOがそれでも「苦渋の選択」に踏み切った背景には、実際の感染・死者数が、現場で把握できている数字を大きく上回り「状況ははるかに深刻」(国連関係者)という危機感がある。

 WHOの容認前、治療薬を投与しないという判断をした医師らもいる。

 米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、国境なき医師団(MSF)は7月下旬、シエラレオネで活動中にエボラ熱に感染した男性医師が亡くなる直前、ZMappの投与を検討したが、断念。声明で「未承認の薬を試すのは非常に難しい決断だ」と振り返った。

 副作用への懸念もあったが、未承認薬を投与して死亡した場合、「アフリカ人をモルモットにした」という強い反発が起きる可能性が十分あった。そうなれば、国際非政府組織(NGO)などによる医療支援はさらに困難になる。

 届いたのは3人分

 WHOのキーニー事務局長補は12日の会見で、現段階で十分な量を供給できる治療薬やワクチンはないと指摘。使用容認の狙いは開発促進だと述べ、「エボラ熱がすぐに治療できるという誤った希望を与えないことが重要だ」と強調した。

 リベリアに届いたZMappは3人分。国内の300人以上の患者には行き渡らない。シエラレオネやナイジェリアも提供を求めているが、製薬会社は既に在庫は尽きたと明らかにしている。

 キーニー氏は治療薬やワクチン製造には数カ月かかるとの認識を示し、開発能力がありながら臨床試験や大量生産に踏み切らなかった製薬業界を批判。「(エボラ熱が)市場価値のない貧しい国での貧しい人たちの病気だからだ」と指摘した。

 新薬開発には150億~200億円の莫大(ばくだい)な資金が必要といわれる。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪「もっと指導力を」 後手のWHOへ批判高まる≫

 西アフリカで感染に歯止めがかからないエボラ出血熱をめぐり、WHOの対応が後手に回っているとの批判が欧米メディアやNGOの間で高まり始めた。現地で医療支援をするMSFは「WHOはもっと指導力を示すべきだ」と、いら立ちをあらわにしている。

 「けしからぬほどに対応が遅い」。米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は8月15日の社説で、WHOを痛烈に非難した。現地のWHOアフリカ地域事務局が「無力で統制が取れていない」と指摘。「ようやく重い腰を上げたジュネーブの本部も予算不足に阻まれ、有能な人材も不足している」と付け足した。

 今回のエボラ熱流行は昨年(2013年)末にギニアで感染が始まり、今年3月にエボラ熱と確認された。WHOのフクダ事務局長補は4月上旬に「完全に封じ込めるまであと2~4カ月かかる」との見解を示したが、感染はむしろ拡大の一途をたどっている。

 当初から事態を深刻視していたMSFは、これまで何度もWHOに警戒を強めるよう呼び掛けたが、反応は常に鈍かったという。MSFのリュー会長は15日のジュネーブでの記者会見で「かつてない状況に直面しているのだから、WHOは医療専門家をもっと現地に派遣するなど対応を強化し、危機を乗り越える上で指導的な立場を取ってもらいたい」と注文した。(共同/SANKEI EXPRESS

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