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【広島土砂崩れ】進まぬ救出に焦り 足に絡む「まさ土」 捜索の体力奪う

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【広島土砂崩れ】進まぬ救出に焦り 足に絡む「まさ土」 捜索の体力奪う

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がれきの撤去作業が行われる現場。住民らは祈るような気持ちで行方不明者の捜索活動を見守った=2014年8月21日午前、広島県広島市安佐南区(三尾郁恵撮影)  多くの命と家屋が濁流にのまれた広島市北部の土砂災害発生から2日目となった8月21日。被災地では住民らが大量の土砂によって進まない救出作業に焦りをみせつつ、祈るような気持ちで捜索活動を見守った。

 安佐北区(あさきたく)で土石流に巻き込まれ亡くなった畑中和希ちゃん(3)。近所の女性(43)は、自治会の配布物を回す母親についてきた姿を覚えている。「人見知りせず『こんにちは』とにこにこしていた。笑顔が忘れられない」と涙を浮かべた。

 幼稚園の副園長の女性(75)は「4月に入園したばかりで、やっと打ち解けてきたところだったのに」と話した。

 安佐南区(あさみなみく)の県営住宅では大量の土砂が1階の部屋を直撃し、住人の真鍋美千子さん(68)の命を奪った。「明るい性格だった」。2階に住む20年来の友人、菅保美さん(68)は目元を押さえた。菅さんによると、1人暮らしの真鍋さんは清掃のパート従業員として仕事熱心で、東京で働く息子の話題になると、うれしそうにしていた。

 安佐南区の自宅から土石流に流され、遺体で見つかった沢本範子さん(77)は穏やかな人柄が周囲に親しまれていた。小学校の元教員の夫と一緒に車でスーパーに出掛けるなど、夫婦仲のいい様子を近隣住民らは覚えている。

 安佐南区の立川洋二さん(81)は、妻のサチコさん(82)とともに遺体で見つかった。洋二さんの職場の後輩で40年来の付き合いがある男性(67)は「退職したらみんな平等と言われたので、『たっちゃん』と呼ぶとうれしそうにしていた。秋には旅行をする計画だったのに」と肩を落とした。

 ≪足に絡む「まさ土」 捜索の体力奪う≫

 被災現場に特有の軟らかい地盤は、行方不明者の救助・捜索活動にも大きな壁となって立ちはだかった。花崗(かこう)岩が風化してできた「まさ土(ど)」は、粒の直径が1ミリにもならないほどきめ細かく、多量の水を含んで足に絡みつく。現場では警察や消防、自衛隊員らが作業を続けたが、重い土砂と大量の流木、山肌からえぐり取られた岩石によって、思うように進まない。

 地滑りエリア

 「とにかくスコップが重い。必要以上に体力が奪われていると感じる」

 被災地の中でも特に被害が大きかった広島市安佐南区の八木地区では自衛隊員が大きくため息をついた。あたり一帯は泥で茶色く染まり、岩や流木がごろごろと転がっていた。現場は山肌を切り開いた斜面の造成地で、もともと「日本一地滑りが起きやすいエリア」(兵庫県立大学の室崎益輝・防災教育センター長)と言われていた。

 高校3年の男子生徒が行方不明になっている安佐南区の別の捜索現場でも、自衛隊員ら約50人が夜通しで泥のかき出しにあたったが、スコップで土をすくうたびに水を含んだまさ土が坂道を下ってくる。難航する捜索の様子を遠巻きに見つめていた同級生(17)は「見守るしかない」と祈るように話した。

 無数の流木も

 近接する民家3軒が土石流の直撃を受け、男女5人の安否が分からなくなっている安佐南区の緑井地区では流木が捜索活動を阻んだ。無数の木々が泥の上に折り重なっているため、消防隊員がチェーンソーを使って細かく寸断。それをバケツリレーの形式で脇によけて、ようやく重機の移動ルートを確保するという手順を強いられた。

 安佐南区の男性(78)はめいと連絡が取れない状態が続いている。「作業がはかどらず、気をもんでいる。こんな光景見たことがない」と涙ながらに話す。

 ただ前日からの懸命の活動により各所で重機の通り道ができつつあり、ある消防隊員は「木や土石を取り除かないと捜索は進まない。重機が来たので、これからだ」と気合を入れ直していた。

 ≪政府、警戒区域指定の支援強化へ≫

 政府は8月21日、局地的豪雨に伴う土砂災害を防ぐため都道府県が重点対策の対象とする「土砂災害警戒区域」の指定促進に向け、支援強化の検討を始めた。土砂災害の危険がある箇所は全国に約52万5000あるとされているのに対し、指定はその7割弱にとどまっており、底上げで住民への危険性周知の徹底を図る。今回、遅れが指摘された避難勧告発令の在り方も見直す。

 広島市の災害現場の多くは未指定だった。古屋圭司防災担当相(61)は21日、記者団に「住民が土砂災害の危険性を十分認識できていたかどうかは課題だ」と述べ、警戒区域の指定促進が重要だとの認識を強調した。

 警戒区域は、広島県で1999年に発生した大規模災害をきっかけに制定された土砂災害防止法に基づく。指定されれば、地域防災計画で位置付け、自治体はハザードマップを策定したり、避難訓練を実施したりする。このうち住民に著しい危険の恐れがある「特別警戒区域」では、開発が規制され、都道府県は建物の移転を勧告できる。

 警戒区域の指定は7月末時点で全国に35万4769カ所、うち特別警戒区域は20万5657カ所で、都道府県のばらつきも目立つ。資産価値低下への住民の懸念や調査に労力がかかることが指定が進まない理由とみられ、政府は支援策の具体案を今後詰める。

 災害時の避難勧告・指示について政府は、市町村に発令基準を検証するよう求める。昨年(2013年)の伊豆大島の土石流災害を踏まえ、内閣府は4月「空振りを恐れず早めに出す」ことを求める新指針を決めており、これに沿った対応を徹底してもらう。

 ハード面の対策として、避難路の整備やセンサーを活用した土砂災害の監視体制強化、砂防施設の長寿命化なども進める。(SANKEI EXPRESS

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