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社会
【台風8号】死者3人、負傷者50人に
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土石流の被害を受けたJR中央線の線路(上)や建物=2014年7月10日、長野県木曽郡南木曽町(共同) 台風8号は7月10日、鹿児島県に上陸して九州を横断した後、高知県沖を経て紀伊半島に再び上陸した。11日は東海から関東、東北の太平洋側を通り、夜までに温帯低気圧に変わる見通し。台風の影響とみられる死者は3人に上り、土砂崩れや浸水など住宅への被害も各地で発生。気象庁は引き続き、警戒を求めた。
台風の列島接近に伴う梅雨前線の活発化で各地で大雨となり、長野県南木曽(なぎそ)町では9日夕、土石流が発生。中学1年、榑沼海斗(くれぬま・かいと)君(12)が巻き込まれ死亡した。
9日に福島県郡山市(こおりやまし)で増水した川に転落した男性(83)が死亡したほか、10日朝には愛媛県西予市(せいよし)で雨の様子を確認するため自宅を出た男性(77)が近くの水路で倒れているのが見つかり、死亡が確認された。7日以降、台風8号による全国各地の負傷者は50人に上った。
台風は10日未明に風速25メートル以上の暴風域がなくなった。勢力は次第に弱まっているが、北日本に延びる梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込んだ影響などで、広範囲で大雨となった。
≪南木曽町 3メートルの岩が道をふさいだ≫
道路は泥で覆われ、線路は土砂で埋まった。7月9日の土石流災害で中学生1人が死亡した長野県南木曽町。10日午後から再び雨が激しくなり、いったん自宅に帰った人も再び避難所に身を寄せた。「また土砂が押し寄せるかもしれない」。住民は警戒を強めた。
土石流が発生した現場では、3メートル以上ある大きな岩がいくつも道をふさいだ。山の斜面にあった小屋は流されてきた数本の太い木に押しつぶされていた。現場脇を走るJR中央線の線路は、家屋の屋根や倒木が混じった土砂で1メートル以上の高さまで埋まっていた。
「あんなのは見たことがない。店の前の道路を、すごい速さで土砂が流れていった」。米穀店を営む60代の川口いさ子さんはいまだに動揺が収まらない。「台風も来るし、いつでも避難できるよう荷物をまとめないと」と自宅に急いだ。
JR南木曽駅そばで給水車からペットボトルに水を入れていた70代の女性は「中学に入ったばかりの子供が亡くなるなんて」と言葉を詰まらせた。「土石流が起きた近くには姉もいる。電話が通じず心配」
南木曽町周辺はいったん収まった雨が昼ごろから再び強まり、一時、道は川のようになった。町役場はいったん自宅に帰った住民に再び避難を呼び掛けた。
町役場の避難所には夕方までに70人以上が身を寄せた。郵便局員の男性(61)は「この雨ではまた土砂が崩れて災害が起きるかもしれない。60年生きてきて、こんなことは初めて」と呆然(ぼうぜん)としていた。
土石流は南木曽町の読書(よみかき)地区の住民らが避難準備を整える間もなく一気に襲った。なぜ土石流は発生したのか。専門家は上流部の地質などに着目する。現場は急峻(きゅうしゅん)な沢の上に土砂災害を起こしやすい地質で、過去にも土石流の被害があった。同様の条件の山は全国に点在し、専門家は注意を呼びかけている。
国土交通省などの調査チームは10日、上流部分で分岐した2つの沢の両方で土石流の発生を確認した。国交省の担当者は「広範囲で斜面崩落があった可能性がある」とみている。
周辺は水を吸いやすくもろい「花崗岩(かこうがん)」と呼ばれる地質。東京農工大の石川芳治教授(砂防工学)は「大雨で崩れた土砂が沢を一気に下る土石流が起き、急な斜面や川幅が狭く威力が増した」と分析している。
この地区では過去に何度も土石流が発生。1966年には全壊・流失家屋約40軒の被害があった。連続雨量が約170ミリの集中豪雨だったという。今回も1時間あたり70ミリの大雨。「沢の水の濁りや山鳴りなどの前兆現象があった可能性もあるが、備える時間がなかったのだろう」。石川教授は推察する。
町が避難勧告を出したのは土石流発生の約10分後の9日午後5時50分。土砂災害警戒情報が出されたのはさらに遅れて午後6時15分で、宮川正光町長も「予測はできなかった」と話す。
土石流が起きやすい地形は全国に点在する。国交省によると、10日正午現在、山形や新潟など計9件発生しているという。土砂崩れは新潟、沖縄で計2件、崖崩れも山口や山形などで計27件確認された。石川教授は「大雨の際は沢や川から離れて避難するなどの意識を持つようにしてほしい」と話している。