ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
社会
【大雪再び】除雪の障害 放置車両撤去へ法改正
更新
大雪被害に伴う主な被害=※地名の数字は2014年2月14日以降の最深積雪量。被害は解消したものも含む 関東甲信や東北地方で降った記録的な大雪で道路に立ち往生した車が除雪の障害となり孤立するドライバーや集落が相次いだことを受け、菅義偉(すが・よしひで)官房長官は2月17日の記者会見で、災害緊急時に車両などを行政側が排除できるよう災害対策基本法改正に着手する意向を表明した。また、今回の大雪は気象庁の予想を大きく超え、重大な自然災害が起きる恐れが高まった場合に発表される「特別警報」が出なかったなど、大雪対応の課題が浮き彫りになった。
菅氏は「(除雪のため)車両所有者の意向確認や車両を損壊した場合の損失補償など法的根拠がない」と指摘した上で、「早急に検討する必要がある。与党と連携しながらしっかり対応したい」と強調した。
政府は、今回の大雪への対応について、降雪が本格化する前の(2月)14日に災害警戒会議を開き、国民に警戒を呼びかけたほか、関係省庁には除雪態勢の確保や交通障害への対応を指示。(2月)15、16両日は山梨や長野などの各県知事から要請を受け、自衛隊を災害派遣したことなどを強調している。
ただ、予想を上回る大雪で、死傷者数など被害状況の把握は難航した。記録的な大雪となった山梨県に亀岡偉民(よしたみ)内閣府政務官を団長とする政府調査団を派遣したのも17日になってから。片側1車線の道路などでは取り残された車両が道路をふさぎ、除雪車が入れないケースも目立った。政府の対応が後手に回ったことは否めない。民主党の海江田万里(かいえだ・ばんり)代表は17日の記者会見で「初動が遅れたとのそしりは免れない」と政府の対応を批判した。
一方、気象庁が特別警報を発表しなかったのは、「都道府県程度の広がりをもって50年に1度の積雪深となり、その後も警報級の降雪が丸1日以上続くと予想される」という基準を満たさなかったためだ。
甲府市では、「50年に1度の積雪深」である41センチ(参考値)を超えたのは(2月)14日午後5時。気象庁によると、その時点では翌15日の昼ごろには止むと考えられており、「その後も警報級の降雪が丸1日以上続くと予想される」との基準を満たさないと判断した。しかし、結果的には114センチと過去最高の積雪を記録した。他の地点でも、(2月)14日夜の時点では丸1日以上降り続くという見通しはなく、特別警報は出さなかった。
特別警報の基準は死者228人が出た「昭和38(1963)年1月豪雪」や死者133人の「昭和56(1981)年豪雪」という過去の災害を参考に作成された。いずれも冬型の気圧配置が続き日本海側に大雪が降ったパターンだ。
今回の大雪は本州の南海上を発達しながら移動する「南岸低気圧」が原因。南岸低気圧の場合は長期間の降雪がもたらされることは少なく、特別警報の基準にあてはまりにくいという。
防災気象情報に詳しい環境防災総合政策研究機構の市沢成介理事(69)は「太平洋側のここまでの雪は想定されていなかった。今回のように、短時間で大量の雪が降った場合にどんな対応ができるかということも含め、今後の運用を考えていく必要がある」と話している。
≪物流ストップ 生活物資が届かない≫
関東甲信と東北では、積雪で道路が通行できなくなるなど物流が寸断され、物資が届かないコンビニエンスストアやガソリンスタンド(GS)が相次いだ。
「弁当などの商品が2日間まったく入ってこない。在庫でしのいでいるが、カップ麺はすでに売り切れ」。群馬県安中市鷺宮のセーブオン安中鷺宮店の店長、橋爪章さん(67)はため息をつく。付近の幹線道路も機能していない状況で、商品の入荷のめども立っていないという。
山梨県内への物流も深刻な状況で、甲斐市内のコンビニの男性店主は「道路が全然だめなので、納品がストップしている」と途方に暮れた様子。
2月15日に観測史上4番目の積雪を観測した福島市では、「17日になってようやく商品が届き始め、ほっとした」。車両約100台が一時立ち往生した国道115号近くの福島市荒井にあるコンビニの女性従業員(62)は安堵(あんど)の表情を浮かべた。
一方、GSでも燃料不足が懸念されている。「暖房用の灯油が切れそう。配達してほしい」。長野県塩尻市を中心にGSを複数店展開する立石コーポレーションでは、16日以降ひっきりなしに電話が鳴る。
積雪により外出できない家庭や立ち往生する自動車、商品の届かないGSで燃料不足が切実になっている。「県内の輸送拠点が雪に埋もれてしまっている。通常の3倍以上の問い合わせがあるが、まったく注文に応えられずにいる」。立石コーポレーションの石油事業部長、土橋周平さん(45)は対応に追われ「県内で消費する石油関係の大半は京浜地区から来る。中央自動車道が動いてくれないとどうにもならない」と頭を抱えた。(SANKEI EXPRESS (動画))