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社会
被災地と民間人材つなぐ 復興と社会問題解決の糸口に
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岩手県釜石市の広聴広報課に勤務する村上浩継さん。自らの経験を復興に役立てたいとの思いを胸に被災地に飛び込んだ=2014年8月8日(日本財団撮影)
8月5日、東京・赤坂の日本財団ビルではたくさんの人が真剣な面持ちで登壇者の言葉に耳を傾けていた。
開催されたのは、「“自分らしい働きかたをみつけよう”『WORK FOR 東北』説明会」と銘打たれたイベント。一見すると就職・転職フェアを思わせるタイトルだが、「WORK FOR 東北」とあるように、東日本大震災の復興を目的としている点が、一般的な就職・転職フェアと異なる。社会人として培った経験やスキル、知識を復興に生かしたいと、20代から70代までの幅広い人材が集まった。
壇上では、被災地での経験を通じて自身の人生を見つめ直してキャリアアップを果たした人や、民間企業から臨時職員として現在も被災地の自治体で働く人らによるトークセッションが行われ、聞き入る参加者の目は真剣そのものだった。
大震災の発生から間もなく3年半が経過しようとしている被災地の岩手県釜石市。市役所の広聴広報課に勤める村上浩継さん(34)も、「東北復興の手助けをしたい」という志を胸に被災地に飛び込んだ一人だ。
きっかけとなったが、2013年10月に開かれた「WORK FOR 東北」の個人向け説明会。そこで紹介された釜石市の広聴広報課の業務は、自分の経験を生かせる仕事だと思い、すぐにエントリーした。
復興の進捗状況を市民に伝えたり、釜石市の魅力を市外に発信したりする仕事を担当すると聞いて申し込んだ。ところが、14年4月に着任してみると、市民からの意見や要望、パブリックコメントを取りまとめ、市政に反映させる広聴の仕事も担当することになった。
未経験の仕事に最初は戸惑いもあったが、「慣れない土地に来て、頑張る人たちと接する機会を多く得られたことで、街のことを早く知ることができ、結果的には良かった」と振り返る。
市職員としての業務に慣れてきた6月頃から、自らが講師を買って出て、市民を対象に「広報勉強会」を始めた。着任前は知ることができなかった、多くの情報を釜石市に来て初めて知った。市民一人一人が広報担当者として、被災地の現状をもっと多くの人に届けたいという思いから始めたものだ。故郷の復興に貢献したいという市民が集まり、情報発信のノウハウを互いに学んでいる。
復興が進むにつれ、産業の再興や地域のコミュニティーの再構築が課題となり、必要とされる人材も変化し、これまでに経験のなかった業務も増えているという。支援に携わる人材の「供給」と、被災地で求められている「需要」のマッチングが課題になっている。
「WORK FOR 東北」は、被災地で求められている復興のための人材の窓口を一元化し、被災地と復興支援を志す企業や個人をつなげるプラットホームの役割を果たしている。
東日本大震災では、地震と津波、さらには原発事故により、広範にわたって被害が発生した。さらに追い打ちをかけるように若者の流出が加速し、20年先に来ると予測されていた超高齢化問題が一気に押し迫っている。震災は物理的な被害だけでなく、これまで私たちが見えていても真剣に向き合ってこなかった社会問題も顕在化させている。また、復興を担う人材は多岐にわたる分野で求められている。
これらの問題に対応するため被災地の行政機関では、これまで以上に積極的に民間人を登用しようと奮闘している。こうした取り組みが、日本の未来の問題解決の糸口となるかもしれない。(日本財団 公益・ボランティア支援グループ 橋本葉一/SANKEI EXPRESS)