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9兆円、環境… リニア、課題多き始動 10月にも着工 JR東海、工事計画申請

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9兆円、環境… リニア、課題多き始動 10月にも着工 JR東海、工事計画申請

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山梨県の実験線を走るリニアの車両=2013年8月(共同)  JR東海は8月26日、2027年に東京・品川-名古屋間での開業を目指すリニア中央新幹線の工事実施計画の認可を国土交通省に申請した。認可後、10月にも着工する見通しだ。45年の大阪までの全線開通にかかる建設費が総額9兆円超に上る巨大プロジェクトが動き出す。巨額の資金調達による経営への影響や環境への配慮など課題も山積だ。

 JR東海の金子慎副社長は、申請後に東京都内で記者会見し、「認可が得られ次第、安全面や環境面に十分配慮して工事を進めたい」と述べた。

 提出した工事実施計画には、品川-名古屋間の総工事費が5兆5235億円になるとの見通しを盛り込んだ。内訳は、区間(286キロ)の86%を占めるトンネル関連費用が1兆6219億円と最も多く、用地関連費用が3420億円などとなっている。総工事費は、高性能設備の導入や人件費の上昇などを踏まえ、当初見込みに比べ935億円増える。

 JR東海は、リニアの建設工事が沿線7都県に与える環境影響評価(アセスメント)の最終的な書面もまとめ、国交相や沿線の知事・市町村長に送付した。金子副社長は「総力を挙げて充実した内容に仕上げた」と強調した。

 国交省は工事実施計画の技術面や安全面などを審査。認可を得れば、JR東海は各地に工事事務所を構え、沿線住民の説明会や用地の取得を本格化させる。

 国の資金援助受けず

 リニア中央新幹線は最高時速約500キロで走行し、品川-名古屋間を40分で結ぶ。建設費はJR東海が全額を自己負担するとしている。

 金子副社長は会見で、巨額の資金負担について、「健全経営、安定配当をしっかりと堅持しながら(工事を)やっていくよう努力したい」と述べた。JR東海では、さまざまな政治圧力を避ける思惑もあり、国の資金援助を受けない方針を表明している。バークレイズ証券の姫野良太アナリストは「(収益源である)東海道新幹線を通じ、安定的なキャッシュフロー(現金収支)を毎年度生み出していくことが求められる」と指摘する。

 ただ、難工事が予想されており、工期が延びればそれだけ建設費も増える。特に、南アルプスを貫通するトンネルや地下に建設する品川、名古屋のターミナル駅は、いずれも10年以上かかる大工事だ。金子副社長は「資材(価格)や金利、物価などの変動はあると思う。企業としての収益力を高めるとともに、工法のコストダウンに努めることで対応していきたい」と述べた。

 生態系への影響最小限に

 環境への配慮も欠かせない。工事では東京ドーム46個分の5680万立方メートルもの残土が出ると見込まれているが、その活用先の多くが未定だ。

 また、トンネルが地下水脈を横切れば、河川流量の減少や枯渇を招き、生態系に影響を与える恐れがある。国交相の意見書でも、工事前に地下水位や河川流量について精度の高い予測を行い、影響を最小限にするよう求めている。(SANKEI EXPRESS

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