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社会
津波最大23メートル 最短到達1分を想定 日本海大地震で政府が初公表
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【日本海大地震】想定される日本海沿岸の主な津波高=2014年8月26日(政府の調査検討会公表)、※津波高は各道府県ごとの最大地点 日本海の大地震で起きる最大級の津波について政府の調査検討会は8月26日、国の想定を初めて公表した。近海でマグニチュード(M)7~8級の地震を起こす恐れがある断層を想定し、北海道から長崎県までの16道府県173市町村の津波高を推計。海岸線での最大は北海道せたな町の23.4メートルで、東北や北陸の高い場所で15メートル前後、西日本で数メートルと推定した。これを基準に沿岸の自治体が浸水想定などを作成し、日本海側の津波対策が本格化する。
日本海には活断層タイプの断層が無数にある。検討会はこのうち日本の沿岸に津波が及ぶM6.8~7.9の地震を起こす60断層を想定。断層の動きをモデル化して計算し、沿岸を50メートルに区切って市町村別の津波高をそれぞれ算出した。
北海道から東北、北陸にかけての海底は大きな津波を起こす断層が多く、最大津波高は北海道南西部で20メートル、青森県で17メートル、山形県で13メートル、石川県で15メートルを超えた。これに対し近畿から中国、九州は高いところでも5メートル前後で、「東高西低」の傾向が出た。
断層は陸に近い場所にあるため、津波は短時間で押し寄せる。地震発生から津波到達までの時間は新潟県佐渡市、福井市など15市町村が1分と最短で、計49市町村が5分以内だった。
想定した断層はいずれも1000年以上の長い間隔で地震を繰り返すとみられ、過去の活動は分かっておらず、次にどの断層が動くかは分からない。
北海道、新潟、福井などの沿岸に立地する10カ所の原子力発電所付近の津波高は、いずれも国の規制基準に沿って電力会社が設定した想定を下回った。
政府は東日本大震災の教訓を踏まえ、地震・津波の新たな想定づくりを進めており、今回は太平洋側の南海トラフ(浅い海溝)と相模トラフに続く推計。日本海側は太平洋側と比べて科学的な知見が乏しく、発生メカニズムも複雑なため策定が遅れていた。
≪薄れている防災意識≫
≪避難計画超えるスピード…練り直し≫
政府の調査検討会が8月26日に公表した日本海の津波想定は、最短1分で津波が押し寄せる日本海側の危険性を浮き彫りにした。沿岸では10~20年間隔で大きな津波被害が起きており、対策が急がれる。
列島付近の日本海では、東日本を乗せた北米プレート(岩板)と大陸側のユーラシアプレートが東西から押し合っている。両者の境界付近には活断層とみられる海底断層があり、津波を伴う地震が起きる。断層が動く頻度は1000年から数千年に1回と低いが、非常に多くの断層があるため、沿岸全体で見ると頻度は高い。
政府が想定した地震の規模はM6.8~7.9で、太平洋側の南海トラフ(浅い海溝)や日本海溝で起きるM8~9級の巨大地震より小さいが、断層の角度が急なため、規模の割に津波が高くなりやすい。
1983年の日本海中部地震(M7.7)は標高15メートルまで津波が駆け上がり104人が死亡。93年の北海道南西沖地震(M7.8)では標高29メートルの津波が奥尻島を襲い、死者・行方不明者は230人に達した。
第1波に相当する30センチの津波が到達するまでの時間は石川県輪島市、福井市などでわずか1分。断層が沿岸のすぐ近くにあるためで、こうした地域の対策は大きな課題になる。自治体の担当者は「1分だと対策はかなり難しい」(福井市)、「5分以内を想定し避難計画を立ててきたが、新たな計画を検討しなくては」(輪島市)と頭を抱える。
想定で最大の津波高となった北海道せたな町は、北海道南西沖地震を起こしたとみられる断層が動いた場合を推定した。津波は崖地などで高くなるため、今回は防災上の重要性が高い平地の最大値も初めて公表。海岸線から200メートル以内で、標高8メートル以下の平地は北海道奥尻町で最大12.4メートルとなった。(SANKEI EXPRESS)