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夢に向かって 「9月7日」共に歩み出す 佐藤真海

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夢に向かって 「9月7日」共に歩み出す 佐藤真海

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五輪のこと、パラリンピックのことを本音で語り合う、パラリンピック女子走り幅跳びの佐藤真海(まみ)さん=2014年3月31日、東京都千代田区(大橋純人撮影)  【パラリンピアン・ライフ】

 8月末、今シーズンの最大の目標として定めていたグランプリ・ファイナルが行われた英バーミンガムへの遠征から戻ってきました。今季は新しい義足を試し、昨年マークした日本記録の更新を狙いましたが、義足に体も技術もなじまず苦戦のシーズンとなりました。

 それにしても、大成功を収めた2012年パラリンピック・ロンドン大会のレガシーが残る英国での大会は、最高の“おもてなし”で迎えてくれました。

 陸上の五輪レベルの選手たちが出場するダイヤモンドリーグと、私たちパラリンピアンの大会が、同じ日の同じ会場で開催されたのです。スタンドは満員のお客さんで埋まり、センスのいい音楽や選手紹介のアナウンスでスタジアムのボルテージは上がり、選手も観客も誰もが楽しめる雰囲気を演出していました。

 子供たちもたくさん観戦に訪れていて、大人と一緒に楽しんでいました。サブトラックでは、オリンピアンもパラリンピアンも関係なく選手たちが最後の調整をしています。五輪選手と車いすの選手が一緒に練習しているような光景です。

 会場を訪れて改めて思いました。国際大会の同時開催は、パラリンピック選手やその競技の認知度を広める絶好の機会になります。そして、選手たちにも高いモチベーションが生まれます。

 「TOKYOを楽しみにしているよ」。海外の選手たちから、こんな言葉をたくさんかけてもらいました。日本が2020年の大会で世界中のアスリートたちを迎えるためには、これからの一年一年が大切になっていきます。英国への遠征で、そんな気持ちがより一層強くなりました。

 招致活動通じて

 東京五輪の招致実現から9月7日でちょうど1年がたちました。最終プレゼンターの一人として、ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会に出席してから今日までの時間は、私にとってまさに激動の日々でもありました。パラリンピックに対する理解が日本で深まっていく-。そんな実感もたくさん得ることができました。

 私事ですが、7日に交際していた男性と入籍を済ませ、女性としても新たな一歩を踏み出すことになりました。

 お相手の男性とは、招致活動を通じて知り合いました。

 私のことをよく知ってくれている会社の上司に言わせると、私は他人にあまり心を開かないタイプなのだそうです。ところが、彼に対しては、自然と胸の内を打ち明けていることに気付かされることが多々あります。仕事のこと、競技のこと、私生活のこと…。記録が伸び悩んだ時期には、私の跳躍映像を分析してくれたり、練習のサポートに駆け付けてくれたりもしました。実は、ブエノスアイレスでも、スピーチ前の私の緊張をほぐすために仲間内で食事に連れ出してくれました。

 招致実現後は多忙な日々が続いていますが、ストレスをためることなく、オンとオフをうまく切り替えて生活を送れたのも彼のおかげだと感謝しています。2人とも体を動かすことが好きなので、リフレッシュを兼ねて出かけた旅先で、一緒に走ったり筋力トレーニングをしたりと自然体でお付き合いをしてきました。

 彼の家族が、本当の家族のようにすぐに歓迎してくれたことも大きかったです。家族が増えることは、やはりうれしいことです。

 今年の9月7日は、取り立ててお日柄がいいというわけではありませんでした。ですが、お互いに大切な仕事を通して知り合ったので、この先も同じ夢に向けて共に歩むという決意を込めて、この日に決めました。

 「スポーツの力」共有

 義足になってからの12年間は、見えないゴールに向かって、とにかくがむしゃらに駆けてきました。その間、3大会のパラリンピックに出場する機会に恵まれ、さまざまな人との出会いに支えられてきました。その歩みがようやく形になってきて、昨年、競技では走り幅跳びで夢だった5メートルの大台を超え、また社会人としても招致活動を通じてグローバルな経験を積むことができました。

 そんな輪の中に、心強いパートナーが加わってくれました。これからは共に歩んでいくことになります。20年パラリンピックをどんな形で一緒に迎えられるのか、楽しみが何倍にもなりました。肩の力を抜いて、2人で助け合いながら楽しく生活していきたいと思います。

 今月は勤務先のサントリーの活動で、宮城県の石巻や故郷の気仙沼に戻る予定もあったりと、「OLアスリート」としてて頑張ります。招致のプレゼンテーションでも訴えた「スポーツの力」を、東北をはじめ多くの人たちと共有し、前向きに生きる笑顔の輪を広げていけたらと思っています。20年大会を「真に復興した東北と共に迎えること」、そして、「パラリンピック会場を満員にすること」。この2つの大きな目標に向かって、自分にできることを探していきたいと思っています。

 読者をはじめ、いつも皆様からいただく温かい励ましやサポートに心より感謝しております。今後も温かく見守っていただければ幸いです。(パラリンピック女子走り幅跳び選手 佐藤真海/SANKEI EXPRESS

 ≪パラ五輪の佐藤真海さん結婚≫

 2020年東京五輪・パラリンピックの招致実現から丸1年となった7日、昨年9月にブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会で最終プレゼンターの一人として登壇したパラリンピック女子走り幅跳びの佐藤真海(さとう・まみ)さん(32)が、男性会社員と結婚したことが分かった。

 佐藤さんは結婚後も現役を続け、所属するサントリーホールディングスの社員としてパラリンピックの普及・啓発活動などにも取り組む。

 相手の男性は1歳年上で広告代理店に勤務。招致活動を通じて知り合った。(SANKEI EXPRESS

 ■さとう・まみ 1982年3月12日、宮城県気仙沼市生まれ。早大時代に骨肉腫を発症し、20歳のときに右足膝下を切断して義足生活に。大学3年だった2003年1月から高校時代以来の陸上競技を再開。女子走り幅跳びで04年アテネ大会から12年ロンドン大会まで3大会連続でパラリンピックに出場。昨春にマークした5メートル02センチは義足選手の日本記録。サントリーに勤務する傍ら講演などでパラリンピックの普及・啓発にも取り組む。

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