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「台湾を変えた」日本の新幹線 世界最高の安全性能、輸出加速へ
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左営駅のホームに停車する台湾新幹線の700T型車両=2014年8月、台湾・高雄市(共同) 東海道新幹線の開業から10月で50年。大量輸送手段として国際的に高速鉄道のインフラ整備が加速する中、日本の新幹線は安全面で世界最高レベルだ。「台湾新幹線」と呼ばれる台湾高速鉄道が日本の技術を導入したのを皮切りに、次の50年に向けて新幹線システムの海外輸出が走りだす。
「台湾新幹線は交通機関の枠を超え、ライフスタイルを変えるインパクトだった」。新幹線を運営する台湾高速鉄路(台湾高鉄)の広報担当、楊淑●(=女へんに亭)さんは力を込める。日本が海外へ新幹線システムを輸出したこれまで唯一のケースだ。
台湾新幹線は1988年に台湾政府が計画し、台湾高鉄が建設。総事業費は約1兆8000億円に上った。最高速度は時速300キロ。台北(台北市)-左営(高雄市)間の約345キロを最速96分で結ぶ。在来線では4時間半かかる。
2007年に開業。13年までに乗客数は延べ2億4000万人を突破した。台湾高鉄を利用する女子大学生の張馨予さんは「台湾のどこに行くにも便利になった」と笑顔で話していた。
1990年代、台湾で高速鉄道計画が動きだすと、日本企業連合も新幹線システムの売り出しに動いたが、台湾政府は98年、欧州方式の運行を決定。だが、ドイツで高速鉄道脱線事故が発生し、台湾中部大地震が起きたことで、同じ地震国で乗客が死亡するような衝突や脱線の事故がない日本の新幹線技術が見直された。
結果的に台湾高鉄は日本連合と車両や運行管理の事業で契約を締結。安全面だけではなく価格面でも、欧州企業連合より優位性があるとして受注に成功した。
ただ問題も生じた。欧州企業連合の工事が始まっており、事業は日欧の混在方式に落ち着く。海外鉄道技術協力協会(東京)の大沼富昭事業部長は「欧州方式の基本設計に日本が合わせる形で苦労した」と振り返る。
システム混在に伴う工期の遅延を受け、台湾新幹線は当初計画よりも2年遅れて開業を迎える事態に陥った。
2009年、JR東海は社内に「海外高速鉄道プロジェクトC&C事業室」を設置。14年には台湾高鉄と車両の運行システムに関するコンサルティング契約を結んだ。
C&C事業室は「できる限り東海道新幹線のシステムに同一化できれば、台湾新幹線のさらなる安全性向上に貢献できる」(落合克典担当課長)と説明する。
新幹線輸出の旗振り役を務めるJR東海の葛西敬之(よしゆき)名誉会長は「新幹線の技術を世界標準にしようと思えば、日本以外で成功するのは貴重」と強調。台湾新幹線を今後のインフラ輸出の代表事例に位置付ける考えだ。
日本では新幹線輸出を後押しする政府の動きが目立つ。官民一体の国家プロジェクトとして本格的に乗り出し、安倍政権の成長戦略の柱としても盛り込まれた。
太田昭宏国土交通相(68)は8月、マレーシアのクアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画で、日本の新幹線システムを採用するよう売り込んだ。9月には、インドの計画でも新幹線導入を働き掛けた。
日本の鉄道業界も動いた。4月、新幹線を運行する東日本、東海、西日本、九州のJR4社が共同歩調を取り、国際高速鉄道協会を立ち上げた。鉄道関連メーカーや大手商社なども参加。高速鉄道の技術や設備の海外普及を狙う。
協会は「新幹線は絶対的な安全性を誇る。システムを国際標準として普及させたい」(関係者)と強調。民間でも連携して新幹線の海外展開を売り込み、ライバルの欧州勢や中国勢との競争で優位に立ちたい考えだ。
「日本はこれまで技術を高めることに重点を置いてきたが、海外展開の成功には技術をもっと世界に知ってもらう努力が必要」。インフラ輸出にかかわる三井物産の金子真人交通プロジェクト部室長は意気込む。(SANKEI EXPRESS)