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水郷めぐり、近江牛、フナ 魅力いっぱい 滋賀県・近江八幡市、安土町
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情緒豊かな八幡堀。着物姿の女性が似合う=2014年6月1日、滋賀県近江八幡市(原圭介撮影)
≪城跡に戦国時代のロマン≫
400年前、信長や秀吉が駆け回った歴史のまち、滋賀県の近江八幡市と安土町を巡った。名所・旧跡で戦国時代のロマンに酔いしれ、琵琶湖や水郷地区で水辺観光を楽しみ、近江牛やフナ寿司に舌鼓を打つ。まるで中身がぎっしり詰まった宝箱のようにリッチな旅だった。
JR東海道新幹線の米原駅で東海道線(琵琶湖線)に乗り換え、しばらく走ると、車窓の右側に彦根城がみえてきた。さらに安土駅を通過して、近江八幡駅に到着。
関白になった秀吉が、おいの秀次に八幡山城を築かせたのは1585(天正13)年。82年に本能寺で信長が明智光秀の謀反のために自刃し、自身が築いた安土城が何者かに焼き払われてから、わずか3年後のことだった。楽市楽座令とともに整備された安土城の城下町は八幡山城に移設された。
この時代、八幡山城から琵琶湖に通じる堀割が築かれた。城は10年で廃城となったが、堀割はいまも「八幡堀」として観光客でにぎわう。
近江八幡市は、隣接する安土町とともに、古くから北は北国街道、東西は東山道、南は八風街道に通じる交通の要衝地。陸路と水路を確保するため琵琶湖の東岸一帯にはほかに、秀吉が住んだ長浜城、石田三成が住んだ佐和山城などが築かれてきたゆえんだ。
八幡堀は、堀を渡る風が涼しく、そぞろ歩きには格好だ。琵琶湖のアユの佃煮や近江牛、名物・赤コンニャクなどを売る店舗が並ぶ。中でも本場の近江牛を使った「三階亭」のメンチカツ(1個260円)が人気だ。
八幡堀から北に約2キロ。北之庄では、手こぎ船での水郷めぐりが行われていた。約4キロの水路を船頭さんの艪で70~80分かけて巡る。定年退職後、船頭に転職し5年目の乾喜平さん(68)は、「都会から来たお客さんは、葦(ヨシ)の茂る自然たっぷりの景色をごらんになって、『よかった~』と、喜んで帰りはるよ」と話した。
安土町でまっさきに訪れたのは安土城跡。高さ199メートルの安土山に7階建て、日本で初めての天守閣をいただく城が築かれたが、いまは累々と続く石垣と石段がその名残。天守閣跡まで登ると、膝が震える。
かつては、天守閣跡から琵琶湖の内湖「大中の湖」が眺望できたが、1945年から、食糧難対策の国営干拓事業で埋め立てられた。湖の眺望を愛し、たびたび訪れていた司馬遼太郎は「街道をゆく」にこう記した。
「のぼりつめて天守台趾に立つと、見わたすかぎり赤っぽい陸地になっていて、湖などどこにもなかった。やられた、とおもった」
安土城跡から約3キロの東近江市内。琵琶湖に注ぎ込む大同川に直径13メートルの大水車があった。88年からのふるさと創生事業でつくられ、水車資料館やカヌー発着場も整備された。7世紀前半、朝鮮半島から訪れた僧・曇微(どんちょう)が、この地に水車の原形を伝えたといわれている。
さて宿は、琵琶湖のほとり「休暇村近江八幡」。ディナーは「近江牛会席」(6480円)。近江牛あぶり、近江牛陶板焼き、近江牛ローストビーフにハモのしゃぶしゃぶや豆乳蒸しなどもつく豪華版。肉にはサシが入り、まったりと甘みに富んで、口に入れたとたん、脂はさらっと溶けるうまさ。
それもそのはず。休暇村に併設する「村のお肉屋さん」が厳選した牛を競りで一頭買いし、販売と料理に振り分けている。
今回は、琵琶湖名産の魚「八珍(はっちん)」のうちニゴロブナ、ビワマス(アメノウオ)のお寿司もいただき、おなかの皮も気分も、はち切れそう。
翌朝は、最後の目的地、琵琶湖内の「沖島」へ。「保元・平治の乱」(1156~59年)で敗れた武士が住み着いたのが祖先と伝わり、かつては石材と漁業の町として栄えたが、現在はわずか人口約350人。沖島の生き字引、資料館管理人の小川正芳さん(86)は、「50年ぐらい前までは、島で栽培した野菜と自分で網で取った魚で、自給自足に近い生活をしていた」とかつてを懐かしむ。
沖島でいま人気なのはよそものコロッケ(6個で300円)。増えすぎた「よそもの」(外来種)ブラックバスを材料に、おからやタマネギ、バター、塩こしょうでさっぱりと仕上げ、ビールにも合う。時代を象徴する食べ物を味わいながら、沖島を後にした。(原圭介、写真も/SANKEI EXPRESS)