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自転車で駆け、食べ、文化に触れる 愛媛県今治市、西条市
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360度海!_しまなみ海道のサイクリングはまるで空を飛んでいるかのような開放感=2014年4月10日、愛媛県(塩塚夢撮影)
しまなみ海道(かいどう)。愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ有料道路で、日本で初めての海峡を横断する自転車道がある。島々を眼下に眺めながら走る絶景ロードだが、全長は約70キロ…。運動経験ゼロの記者は諦めていたが、聞けば途中でレンタサイクル乗り捨ても可能だという。寒すぎず暑すぎずの4、5月は、ちょうどサイクリングのベストシーズン。行くしかないでしょ、今治!
しまなみ海道には数キロおきにレンタサイクルのターミナルがあり、全てのターミナルで乗り捨てが可能だ。今回は今治市側の「サンライズ糸山」から、島を一つ越えた大島にある道の駅「よしうみいきいき館」までの約6.2キロを走る。
まずはサンライズで自転車を借りる(1日大人500円、別途要保証料)。本格的なロードバイクで、ママチャリしか乗ったことがない記者にとってはちょっと不安…。だが、さすがロードバイク、車体が軽く、上り坂もスイスイ走れてしまう。橋の上に出ると、視界は360度海。ほおをなでる風、のんびり行き交う小舟…。空を飛んでいるかのような開放感に、「来てよかった」と心から思わされた。
あっという間に大島に到着。自転車を返却する道の駅からは、島内バスと路線バスを乗り継いでJR今治駅まで行くことができる。もちろん、自転車でサンライズまで引き返してもOK。
運動しておなかがすいた。今治名物を一度に味わいたいなら、駅から歩いて10分ほどの「笑姫(えひめ)食堂」へ。今治っ子のソウルフードである「焼豚玉子飯」は、ご飯の上に焼き豚と半熟の目玉焼きをのせただけのシンプルなもの。豪快にかき混ぜて食べると、甘いタレととろ~り卵、ジューシーな焼き豚が混然一体となって本能のど真ん中を直撃するおいしさだ。魚介スープの「今治ラーメン」、鉄板で炒めた「とり皮」(今治では焼き鳥は串ではなく鉄板で炒めるそう)も一緒に頼んでご当地気分を満喫する。
今治といえば…のタオルにも、独自の価値観を発信するメーカーがある。オーガニックコットンと風力発電の風で織る「IKEUCHI ORGANIC(イケウチ オーガニック)」。赤ちゃんが口に含んでも大丈夫な世界最高水準の安全テストをクリアし、風力発電100%と最小限の環境負荷で作られる、人にも地球にも優しいブランドだ。
工場に併設されたファクトリーショップに並んだタオルは、ふかふかの肌触り。「使えば使うほどよさが分かってもらえるはず」と経営企画統括部部長の益永歩さんは胸を張る。
宿泊先はお隣の西条市にある「休暇村瀬戸内東予」。瀬戸内海国立公園の中に立地し、全室からパノラマ写真のようなオーシャンビューを楽しめる。伊予の三湯の一つである本谷温泉から引湯したお風呂で疲れを癒やしたら、夕食は自慢のバイキング。メニューは日によって違うが、この日はタイやカンパチといった高級魚のお刺身など、瀬戸内の幸が勢ぞろいしていた。
泊まるだけではもったいない。西条市は名水の里として知られ、市内の各地で「うちぬき」と呼ばれる自噴井から地下水が湧き出ている。JR伊予西条駅前の「Vita」は、うちぬきの水と西条産の素材を使った自家製ジェラートがそろう人気店。「軟水なのですごく使いやすい」(店長の佐々木智之さん)という名水の恵みと、素材を生かした優しい味わいが体にすっとなじむ。
名水は伝統産業にも生かされている。豊富な水があることから、手すき和紙の生産も盛んなのだ。国吉地区の「手漉和紙山本屋」では、職人さんが一心に紙作りに向かい合う。紙をすき、伸ばし、乾かし…。「本当に丁寧に作ってる。涙が出ちゃいそうになるくらい」と代表の杉野ミチ子さん。こうして出来上がった高級和紙「檀紙」はちりめんのようなシワが特徴で、手すきならではの繊細な美しさだ。
ご当地グルメに名水の恵みと盛りだくさんの今治・西条の旅。サイクリングの楽しさにも目覚め、「次は尾道から自転車で…」と再訪を決意したのだった。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■休暇村瀬戸内東予 愛媛県西条市河原津。(電)0898・48・0311。基本のバイキングプランは1万90円~(1泊2食付き)。アワビや伊予牛が楽しめるプランなども。www.qkamura.or.jp/toyo/