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気をつけた 今と違う話し方、動き方 映画「柘榴坂の仇討」 広末涼子さんインタビュー

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気をつけた 今と違う話し方、動き方 映画「柘榴坂の仇討」 広末涼子さんインタビュー

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「たくさんの若い人たちに時代劇に興味を持ってもらえればうれしいです」と語る、女優の広末(ひろすえ)涼子さん=2014年9月4日、東京都港区汐留(大山実撮影)  長い芸能生活では常に新しいことに挑戦してきたつもりだが、気がつけば時代劇映画への出演は浅田次郎原作の「柘榴坂(ざくろざか)の仇討(あだうち)」(若松節朗(せつろう)監督)が初めてだった。そんな広末(ひろすえ)涼子(34)は時代劇の大ファン。特にテレビドラマの「水戸黄門」や「大岡越前」といった勧善懲悪の世界にどっぷりと浸り、爽快な気持ちになることを楽しんできた。「事件が勃発しても、最後は必ず正義が勝つんですよ。現代のヒーローものの作品に似ていますよね。構成も含めて私は小さい頃から時代劇が大好きでした」

 複雑な人間ドラマ

 ただ、「柘榴坂の仇討」に関しては、善悪の判断を付けにくい登場人物たちの複雑な心のありようを描いた人間ドラマだ。広末は「確かに武士道やおとこ気がメーンに描かれているはずなのに、脚本を読んでいても『これは時代劇だ』という明確なイメージが持てませんでした。だからこそ広い世代にこの映画を見てもらえると思います」と期待を膨らませた。

 幕末は1860(安政7)年、主君・井伊直弼(中村吉右衛門)の“用心棒”として仕えていた彦根藩士、志村金吾(中井貴一)は、あろうことか桜田門外で井伊暗殺を許してしまう。国元の両親は自害。金吾は切腹が許されず、あだ討ちを命じられ、時代が明治へ移ってもなお刺客を探し続ける。やがて金吾はかつての水戸藩浪士で、今では車引きの直吉と名を変えて東京で生きていた佐橋十兵衛(阿部寛)を見つけ出す。だが、明治政府があだ討ち禁止令を出したばかりだった。

 指導「厳しく」懇願

 広末が演じたのは、東京の食事処で給仕として働き、文句一つ言わずに食い扶持のない夫、金吾を支え続ける妻、セツだ。若松監督からは「泣くな。涙は最後までとっておきなさい。いつもりんとしたたたずまいの強い女性でいてほしい」と強く要望されたのはいいが、撮影を前に広末はセツの所作に自信がなく、きちんとこなせるのか心配でならなかったため、指導担当に「厳しくお願いします」と懇願した。

 「歩き方、話し方、動き方-すべての所作が今の時代を生きている私とは違います。でも、そんな何気ない部分から大切な真実が垣間見えるし、嘘があればばれてしまい、作品すべてが薄っぺらく見えてしまう。当たり前の大切な動きは細部に至るまで気をつけましたね」。美しく見せるための指遣い、角度、歩く足の運び方-大きな動きは何もない。むしろ指導の通りゆったりと体を動かしたのにもかかわらず、撮影後には激しい筋肉疲労に襲われたそうだ。

 夫婦の絆すごい

 中井との共演は初めてだった。中井と共演できればきっと素晴らしい作品ができるに違いないと考え、本作への出演をお願いした部分もある。「撮影現場で中井さんはずっと金吾そのままの雰囲気を漂わせていましたね。気が緩んだところを見たことがないというか…。そんないちずで、いい意味で不器用そうにも見えるところは、もしかしたら中井さんと金吾の共通点かもしれません」。常に自然体で、金吾の生きざまをも感じさせてくれる役者の先輩、中井のたたずまいに、広末はあこがれのまなざしを向けた。

 もし広末が金吾の立場だったら、十数年も律義に犯人捜しなど続けず、思い切って新しい世の中にのっとった生き方へとかじを切る? 広末の答えはノーだ。広末は「金吾が生きる道を選んだのはきっとセツがいたからだよ」との中井の見立てを踏まえ、ノーの気持ちを一層強めた。「セツは『(金吾が)本懐を遂げるまで、そばを離れません』と言いました。ああ、夫婦の絆って本当にすごいなあ、人は大切な人がいると、そこまでの支えになってくれるんだなあ-と、私は痛感しましたね。それは私も同じことだと思います。男性であれ、女性であれ、守るべきものがあり、帰る場所があり、支えたい人がいるということが、人生を生きる大きな原動力になるんですよ」。9月20日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:大山実/SANKEI EXPRESS

 ■ひろすえ・りょうこ 1980年7月18日、高知県生まれ。主な映画出演作は、97年「20世紀ノスタルジア」、99年「秘密」「鉄道員(ぽっぽや)」、2001年「WASABI」、08年「おくりびと」(米アカデミー外国語映画賞受賞)、09年「ゼロの焦点」、12年「鍵泥棒のメソッド」など。1997年のデビューシングル「MajiでKoiする5秒前」が大ヒット。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年9月24日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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