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【取材最前線】「言葉の壁」越えるために
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2020年東京五輪の主な会場(計画)=2013年9月8日現在、※東京の「立候補ファイル」などによる 「五輪観戦を終えてちょっと涼しくなった夕方などに美術館、博物館に来てもらい、日本が持つ多様な芸術文化を世界に発信したい」。今月初め、東京都の舛添(ますぞえ)要一知事は、首都圏にある博物館、美術館の館長8人と意見交換会を行い、こう切り出した。2020年東京五輪を見据え、国公立、私立の壁を超えて、便利でわかりやすい共通パスポートの発行などネットワーク化を推進したいという。加えて、各館の多言語化の現状も報告された。
舛添知事はかつて留学していた文化芸術都市、パリを強く意識しているようだ。ルーブル美術館の場合、館内表示や展示キャプションは仏語表記が基本だが、パンフレットは12カ国語を用意。オーディオガイドは7カ国語、ホームページも4カ国語対応という。さすが世界で最も来場者の多い美術館。でも実は、東京も負けてはいない。
上野公園の東京国立博物館では、館内表示とキャプションは日英併記が基本(一部、中国・韓国語も)。パンフレットとホームページは7カ国語に対応し、ボランティアガイドは8カ国語で可能という。外国人に人気の両国の江戸東京博物館もほぼ同じレベル。東京以外でも、貴重な浮世絵コレクションで知られる千葉市美術館は、多言語化で後れを取っているものの今後、英語対応を急ぐとか。
観光立国を目指す国策のもと、文化施設のみならず、街の至るところで多言語対応が進められている。思えば日本人はずっと、「言葉の壁」を意識してきた。
半世紀前の東京五輪では、オリンピック史上初めてピクトグラム(絵文字)が採用された。言葉がなくてもそれとわかる絵文字を、日本のデザイナーらは知恵を絞って作った。「そのノウハウは、特に1972年のミュンヘン五輪で継承され、五輪スタンダードになっていったのです」と、スイス・ローザンヌにあるオリンピックミュージアムの文化教育プログラム責任者、アン・シヴァリーさんは説明する。「開催地のシンボルマークを世界中に浸透させたのも東京五輪が最初なんです」
言葉の壁を、研ぎ澄まされた視覚表現で乗り越える。多言語化とともに、そんな日本のデザイナーらの「もてなしの表現」を、6年後の東京五輪でも期待したい。(黒沢綾子/SANKEI EXPRESS)