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顔は描かない「そうしたくなっちゃうから」 五木田智央「TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」

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顔は描かない「そうしたくなっちゃうから」 五木田智央「TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」

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「At_the_Weekend,Aark_Clouds_Hang_Low」(週末は暗雲低迷)2014年(提供写真)  【アートクルーズ】

 イラストレーターの五木田智央(1969~)は10年以上、大型カンバスに作品を描いてきた。その作品を展示する美術館では初めての個展「TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」が、千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館で開かれている。白黒で描かれたコントラストの強い抽象画は、不安やユーモア、懐かしさを感じさせる独特の「ゴキタワールド」を描き出している。

 白黒の抽象画

 今回の個展のために描き下ろした11点のうちの1作「At the Weekend, Dark Clouds Hang Low」では、浜辺に横たわる女性の上空に、黒い雲が忍び寄る。

 アクリルグワッシュで描かれた白と黒と灰色のコントラストが不思議な美しさを生み出す。黒髪に縁取られた顔らしき部分の上部には目なのか、小さな白い点が2つついているが、表情は分からない。

 2013年に描かれた「Captive Bunny」は、バニーガールと、バニーガールを後ろから捕まえる男が登場する。漆黒の闇のような黒、ビルの外壁のような灰色、そして雪のような白がシャープな階調の美を生み出している。

 しかし、この作品でも、普通に顔は描かれず、男の顔はジグザグ模様で覆われ、バニーガールの顔は、溶け落ちる水飴のようだ。

 この2つの作品には、キュービスムやシュールレアリスムなどの影響が垣間見られる。画面から感じられるものは、不安さやグロテスクさのほかに、ユーモアや懐かしさもあり、ポップアートや商業美術さえも土壌にしているようだ。

 五木田は10年ほど前から、このアクリルグワッシュによる白黒の絵に「すっかりはまってしまった」という。顔を描かないことについては「なぜか分からないが、そうしたくなっちゃう」と無意識の心地よさを挙げた。

 全体から感じる

 「Untitled(works on paper),2014」には、プロレスラーや女たちの肖像画に交じって、顔のない人物画やデザイン画も収まり面白い。見ていて飽きない。

 イラストレーターとしてCDジャケットやTシャツのデザインを手がけてきた五木田にとって、数限りなく描いてきた「顔」は、最強の“商品”の一つだったろう。「Untitled-」を見るだけでも、顔の表情を描き出す力は際だっている。分かりやすく何かを伝えることが求められる商業美術という世界では、最も求められる才能だ。

 しかし、だからこそ五木田は、大型カンバスの作品では、顔を描かないのだろう。顔のない絵を見る者は、絵全体を見るようになり、全体から何かを感じ取ろうとする。

 商業美術から飛躍

 五木田は、いわゆる「サブカルチャー」の中で評価を受けるだけでは満足せず、ここ10年以上、カンバス画を発表し、海外、主にアメリカで何度も個展を開き、年々評価を高めてきた。ご多分にもれず、いま“逆輸入”されるように日本国内で存在感を増している。

 岡本太郎が著書「今日の芸術」で指摘したように、アーティストには「いままでの自分自身をも切りすて、のり越えて、おそろしい未知の世界に、おのれを賭けていく」覚悟が必要だ。五木田にはその姿勢がある。すでに、文化(アート)にメーンもサブもない時代になってひさしい。むしろサブカルチャーからさまざまな影響を受けてきた作家ほど、誰も見たことのない世界を展開できるのではないか。

 五木田は、題名の「GREAT CIRCUS」という言葉について、「スラングで『大さわぎ』の意味がある」と自嘲気味に話したが、五木田サーカスは、まさに幕を開けたばかり。今後、どんな“見世物”が飛び出して来るか楽しみである。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「五木田智央 TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」 2014年12月24日まで、DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)。一般1200円。利用案内フリーダイヤル0120・498・130。

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