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好奇心満足させる大胆柄アイテム MSGM
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秋口は、女性の唇や目元をモチーフにしたドレスが充実。(左から)10万3000円、6万8000円、12万2000円。※価格はすべて税別です=2014年8月27日、東京都中央区の三越銀座店(川口良介撮影)
ここ最近、柄の上に全く別の柄を重ねる、派手めのミックスモチーフファッションが花盛り。トレンド感とオリジナリティーを兼ね備えたプリント柄を各ブランドが打ち出す中、今後ますます注目を集めそうなのが、イタリアの新進気鋭のブランド「MSGM(エムエスジーエム)」だ。特徴である大胆で自由な柄使いはどのようにして生まれたのかを探った。
イタリアで2009年に誕生したブランド「MSGM」は、ジャンルを問わず編集されたカルチャー雑誌のようだ。デザイナーのマッシモ・ジョルジェッティ(37)が、時代もジャンルも横断し、好みの音楽、写真、絵画、現代美術、文学などから集めたアーティスティックなエッセンスを、独自のセンスで「旬」の美しい洋服に仕立て上げている。その広い守備範囲と、そこから個性さまざまなモチーフを選択して1枚の洋服にコラージュする「編集」の手腕に、思わずうならされる。
例えば、今年2月、イタリア・ミラノの2014~15年秋冬コレクションで発表された黒のドレスは、写真家ダリオ・カテラニが撮影した美しい女性の顔のモノクロ写真に、画家のルカ・デ・ガエタノが花びらのように見える筆致でランダムに色彩をのせ、柄の配置は大胆だが、不思議なバランスで調和した心地よい一着に。ほかにも、ドイツ現代美術の巨匠、ゲルハルト・リヒターの抽象画をモチーフにしたウエアもある。また今季は、アイスランドの歌姫、ビョークや、レディオヘッド、ポーティスヘッドなどのバンドの楽曲なども着想源になっているのだという。
このように、雑多なカルチャーを混ぜあわせて生まれるMSGMの色・柄使いはとてもパワフルだ。「MSGMは、ある意味、不遜(ふそん)だといわれそうなまでのエネルギーを持っています。好奇心旺盛な人たちのためのブランドなのです」。デザインする上で大切にしている点をジョルジェッティ氏にメールで問うと、このように返ってきた。
まだ新しいブランドだが、英のモデル、アレクサ・チャン(30)やオリビア・パレルモ(28)など高感度なセレブが着用して話題になり、日本でもじわりじわりと人気が上昇。8月26日、国内初となるブランド単独の常設店が三越銀座店4階にオープンした。9月初旬はプレフォール(初秋)のコレクションを中心に洋服を展開している。
プレフォールのコレクションは、米音楽界の伝説的存在、ジョニー・キャッシュ(1932~2003年)や、今年1月にグラミー賞を受賞したロックバンド「ヴァンパイア・ウィークエンド」などの楽曲から「BEAUTY IS TRUTH(美は真実)」などのキーワードを導いて構成。パウダールームでメークする女性像をイメージし、溶かした口紅、砕いたチークやアイシャドーなどメークアイテムをモチーフにした華やかなプリントをあしらった。またメークを施し、豊かになった女性のまつげや唇を水彩画風の柄にして、ドレスなどにのせた。
ここ数シーズン人気のフラワー柄も、全く異質な大理石柄とコラージュされており、ユニークで興味をそそる。ツイードジャケットの裏地には、米の詩人、シルビア・プラス(1932~63年)による愛について詩の一節がプリントされており、思わず原著を手に取りたくなる。
こうしてMSGMの洋服は、着る人を美しく見せるだけでなく、知的好奇心まで刺激するのだ。(文:津川綾子/撮影:川口良介/SANKEI EXPRESS)
※価格はすべて税別です。