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【御嶽山噴火】「あの笑顔もう見られないんですね」

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【御嶽山噴火】「あの笑顔もう見られないんですね」

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御嶽山(おんたけさん、3067メートル)山頂付近で、取り残された登山者をヘリコプターに運び込む自衛隊員=2014年9月29日午前10時50分(共同通信社ヘリから撮影)  御嶽山噴火で犠牲となったのは山好きの会社員や登山者のガイドを務めるなど、自然を愛する人たちだった。

 長野県塩尻市の会社員、林卓司さん(54)は、温厚で家族思いだったという。

 「今回の思いがけない出来事で大変心を痛めております」

 身元判明から一夜明けた29日朝、林さんの自宅玄関には妻の署名が入った張り紙がされていた。勤め先の同僚らが慌ただしく出入りしたが、遺族は精神的に動揺している状態だという。

 関係者によると、今回の登山は夫婦一緒に登る予定だった。だが妻の体調がすぐれなかったため、林さんは「一人で行ってくる」と午前7時ごろに家を出たという。それが家族が見た最後の姿となった。

 今春には地元で就職した一人娘のために、林さんは引っ越しを手伝いに行っていたという。今の会社に出向になる前に勤めていた地方銀行で同期入行だった男性(55)は「言葉にはあまり出さなかったが、家族を思う気持ちは人一倍強かったのでは」と声を詰まらせた。

 銀行員時代には御嶽山の麓の長野県木曽町の支店で支店長を務め、地元商店街にも頻繁に顔を出したという。書店経営の女性(37)は「ニコニコした笑顔が印象的。支店に行くといつも一番奥から声をかけてくれた。あの笑顔はもう見られないんですね」。

 また、長野県松本市の無職、横田和正さん(61)は山登りを楽しむ一方、景観保護にも力を入れてきた。

 近くに住む友人の金井保志さん(67)によると、口数は少ないが、大好きな山の話になると冗舌になった。「美ケ原高原パークボランティアの会」に所属し、登山者のガイドをする一方、景観保護のための清掃登山も行っていた。金井さんは「根っからの山好きだった人が犠牲となり残念。これも運命だったのだろうか」と肩を落とした。

 岐阜市の会社員、三浦勇さん(45)は、同僚3人と一緒に御嶽山に出掛け、巻き込まれた。悲報を知った勤務先の上司は「ただ、ただびっくりした」とうちひしがれた様子だった。

 勤務先によると、三浦さんは今年2月に入社するまでは名古屋市内の別の会社に勤務していた。周囲には「山が好きだ」と話していた。同僚3人のうち1人は、29日になっても安否が分からないという。

 名古屋市中村区の会社員、浅井佑介さん(23)。名古屋市中川区にある両親宅はひっそりと静まりかえり、チャイムを押しても返事はなかった。向かいに住む男性(70)は「29日朝に両親がわざわざ訪ねてきて佑介さんが亡くなったことを伝えてくれた。とても落ち込んでいるような様子だった」と話した。

 幼いころの浅井さんを知る女性(66)は「元気で活発なお子さんだった。2、3年前にスーツ姿で歩いているのを見掛けて、立派な社会人になったんだと思っていた。こんなことになるなんて…」と言葉を失っていた。

 ≪「奇跡が起きてほしい」 無事祈る安否不明者の家族≫

 御嶽山噴火から3日目の29日、山頂に取り残された心肺停止の登山者が、ヘリコプターで次々と麓の公園に搬送された。「奇跡が起きてほしい」「自分で捜したい」。全国から安否情報を求めて駆け付けた家族や友人約100人は、疲労感をにじませながらも無事を祈り続けた。

 「今ごろどうしているのか。早く見つかってほしい」。長野県木曽町役場にある待機所を訪れた山口市の男性(59)は憔悴(しょうすい)した表情でこう話した。大阪府に住む娘(30)とは噴火以来、連絡がついていないという。

 娘は今年1月に結婚し、大阪府内で新婚生活をスタートさせたばかり。5年ほど前から山登りを始め、全国の山に出かけていた。噴火前夜の26日に娘から電話で「明日は登山に行く」と聞かされてはいたが、「頻繁に山に登っていたので、近場だとしか思わなかった」。

 27日、テレビで御嶽山の噴火を知った。「まさか違うよな」。だが夕方、娘の夫から「御嶽山に登っている」と電話で告げられた。

 何度も娘の携帯電話を鳴らし、いてもたってもいられず、28日に妻らと木曽町に駆けつけた。「山が好きで、でも、まさか噴火するなんて。運が悪かったとしか…」。一刻も早く娘の安否を知りたいが、待機所でもほとんど情報は得られない。「心肺停止の人の身元確認が進むのだろうが、何とか奇跡が起きてほしい」と望みをかけた。

 心肺停止状態の登山者を乗せた自衛隊のヘリコプターは午前10時50分ごろから次々と麓の長野県王滝村の公園に降り立った。数十人の警察官や消防隊員らがヘリと警察車両の間を大きな青いシートで囲い、周囲から見えないよう警察車両に登山者を運び込んだ。

 愛知県一宮市から来た会社員男性(53)は、24歳の長女の安否が分からないまま。木曽町役場近くの集会所で夜を明かしたが、ほとんど眠れなかったという。男性は「安否確認の情報が全くなく、何も分からない。自分で山に登って捜しに行きたいぐらいだ。とにかく助かってほしい」と願っていた。(SANKEI EXPRESS

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