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生き方編 ようやく会えた伝説の歌声
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先日、ラジオ「IKKOのなになになぁに~!?」の収録で、数十年ぶりにあこがれの歌声と再会することができました。歌声の主は、ジャズシンガーの伊藤君子さん。1946年香川県に生まれ、日本と米国のジャズシーンで活躍。89年には、アルバム「フォロー・ミー(FOLLOW ME)」で、米ラジオ&レコード誌のコンテンポラリー・ジャズ部門の16位にチャート・インするという、日本人女性ヴォーカリスト初の快挙を成し遂げた偉大な方です。
私が初めて伊藤さんの「フォロー・ミー」を聞いたのは20年以上も前になります。私は当時20代。夜のテレビ番組に、伊藤さんが登場されたのです。この曲の原曲は中近東のもの。それを、伊藤さんがアレンジなさいました。テレビ番組では、モスクを背景に、独特のリズムに乗せて伊藤さんが歌っていらっしゃいました。その歌声に「この人はいったい誰なんだろう」と強烈な印象を抱いたものです。人の五感は、カルチャーショックを受けるようなものに出会ったとき、決してその衝撃を忘れないものですね。
以来、私はすっかり伊藤さんの「フォロー・ミー」に夢中になってしまいました。私は着物のプロデュースも手がけているのですが、ファッションショーでは必ず最後にこの曲をかけさせていただいています。幻想的な雰囲気が、とても着物と合うんですね。
そんな、私にとって特別な「フォロー・ミー」を、ついに生で、とても近くで聞くことができたのです。ずっと伊藤さんにお会いしたくて、何度もオファーをしていたのですが、なかなかスケジュールが合わず…やっと、やっとの対面でした。
最初にお会いしたときの、一言がしびれました。「IKKOさんが最初に聞いたときのようには歌えないかもしれないわ。私、もう、アンティークだから」。アンティーク…その言葉がすっと出てくるのが、伊藤さんのすごさです。バッグも、家具も、すべての“本物”は、傷がついても、汚れても味に変わっていく。もとのものよりも、価値が増していく。ああ、この方は人生の引き出しに、たくさんのものを詰めていらした方なんだ…と思わされました。深いものを知り尽くさないと、出てこない言葉ですよね。
そして、その“アンティーク”の歌声がすばらしかった! 経験を重ねてきたからこその深みある歌声。重厚で力強く、それでいて、風が吹き抜けるような軽やかさ、透明感を併せもつ。そのとき、私の心の中に浮かんでいたのは、深山の光景です。夜明け前の山の獣たち、神々の叫びのような…。よりよい魂に変えていこうという叫びのような…。
私は英語が分かりませんが、言葉が分からなくても、すっと心に入っていくものがある。体の中を美しい音色が吹き抜け、魂を浄化していってくれる。涙が止まりませんでした。
歌い方もまた、すごい。歌い始めは、目をつぶってグッと歌の世界へ入っていく。それから、ときどき、私の目をじっと見つめる。「あなたは、どのフォロー・ミーがお好き…?」そう、問いかけられているような気がしました。聞く相手に合わせて、歌い方を変えていらっしゃる。そんな感想を持ちました。
私の心をずっととらえて離さなかった「フォロー・ミー」。数十年後の再会では、最初の出会いよりもさらなる感動と衝撃を与えてくださいました。多くの人生経験を重ねたからこそ。改めて、伊藤君子さんという方は底なし沼だな…と心の底から感動した歌声でした。
愛を込めて IKKO(美容家 IKKO/SANKEI EXPRESS)