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中国・4中総会閉幕 党基盤強化へ 法治を全面的推進
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中国の主要都市 中国共産党の重要会議、第18期中央委員会第4回総会(4中総会)は23日、「法治の全面的な推進」を約束するコミュニケを採択して閉幕した。司法の判断が権力に左右されてきた構造の改革をアピールすることで、共産党統治の基盤を強化する狙いがうかがえる。
20日から北京で開かれていた総会には、習近平総書記(61)=国家主席=ら政治局常務委員7人をはじめ、中央委員・中央委員候補の計約370人が出席。総会では初めて、法に基づく統治や司法制度の在り方などを専門的に討議した。
総会では、元最高指導部メンバーで、重大な規律違反により調査・立件が決まった周永康氏(71)に近い、李春城・元四川省党委副書記ら6人の党籍剥奪を確認した。周氏本人の、党籍剥奪問題や刑事責任追及についても議論したとみられる。
習近平指導部は、貧富の格差の拡大で高まる社会の不満を、反腐敗運動を徹底することで緩和しようとしてきた。周氏の処分は、地位を問わず汚職や腐敗を厳しく取り締まるという姿勢の象徴ともいえる。中国国営新華社通信などはここ数日、地方政府幹部が被告になった裁判例などを積極的に報じていた。
ただ、コミュニケは「法律の前では人々は平等」とする一方、「法治国家建設という目標のためには共産党の指導の堅持が必要」と強調している。「法による統治」の推進が、党の権限強化につながることを懸念する声もある。(北京 川越一/SANKEI EXPRESS)
≪政権の改革姿勢アピール≫
23日に閉幕した中国共産党の重要会議、4中総会では、「法による支配の強化」などを明記した「決定」を採択した。「中国では法律より指導者の意向が重要視される」といった批判は以前から国内外から寄せられており、今回の決定は“人治国家”のイメージを払拭して「法律を重視」する姿勢を改めて打ち出し、政権の改革姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。
習近平国家主席は政権発足直後の2013年春から、「権力の行使への制約と監督を強化し、権力を制度という籠に閉じ込めなければならない」との趣旨の発言を繰り返してきた。今回の決定はその発言を具体化したものといえる。しかし、北京の人権派弁護士は、党指導部が打ち出す「法による支配」の方針について「言葉遊びに過ぎない。これで中国が法治国家になるとは思えない」と一蹴する。
習政権発足後、共産党への権力集中は強化されている。法律はむしろ軽視される傾向にあると指摘する声が多い。体制に批判的な改革派知識人への締め付けが強まり、インターネットで指導者を批判する文章を発表した81才の老知識人を「騒ぎを起こそうとした」との容疑で逮捕した。またウイグル族の人権状況などを伝えるホームページをつくった大学教師に無期懲役との重い判決が下すなど、司法機関の暴走が目立っている。
習近平が推進する反腐敗キャンペーンでは、元最高指導部メンバーの周永康氏を失脚させた。その親族や元部下など数百人が粛清された際に、各地の警察や検察は党の調査機関の指揮を受けて動いたといわれる。
習政権が主導する「法による支配」は、政敵を倒すときに利用する司法機関の権限強化が目的だと指摘する声もある。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS)
≪香港 民主派デモ「違法性」警告≫
中国共産党は4中総会の「法治全面推進」採択で、選挙制度改革をめぐってデモ隊が抗議の街頭占拠を続ける香港の民主派に対し、民主主義とは異質な価値観に基づいた“北京式法治”の受け入れを強く迫った形だ。
習近平指導部は香港の学生や市民によるデモを「反体制的な違法行為」とみなし、繰り返し警告を行っている。共産党機関紙、人民日報の論評では、香港に対し「重大な原則問題で譲歩の余地はない」と断言。デモ隊の街頭占拠は「最高国家権力機関に向けた挑戦であり最終的に失敗する」などと非難を強めている。
人民日報の論評は「(学生らは)違法な要求や政治スローガンで、香港の法治や社会秩序を破壊する違法手段を使っており、政治目的はもはや『真の普通選挙』でなくなった」と指摘している。デモ隊の強制排除など強硬措置を、「法治の範囲の内政問題」と主張し、国際社会の批判を突っぱねる根拠にするとみられる。
2017年の次期行政長官選挙で事実上、民主派の候補を排除するとの中国全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会による制度改革の決定が「唯一の選択肢だ」(人民日報)とする姿勢にも変化はない。
中国は、「香港特別行政区は(北京の)中央人民政府が直轄し、国家でも独立した政治実体でもない」と位置づけている。中国は今後、「法治」の名の下に香港の民主派に対し、強権的な政策や強硬手段を次々に打ち出す可能性が高い。(香港 河崎真澄/SANKEI EXPRESS)