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社会
【御嶽山噴火】あす1カ月 安全アピール自粛 観光に深刻打撃
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営業の見通しが立たないスキー場。入口は通行止めで、背後には噴煙を上げ続ける御嶽山(おんたけさん、3067メートル)が見える=2014年10月24日、長野県木曽郡王滝村(加藤園子撮影) 57人が死亡、6人が行方不明となった御嶽山(おんたけさん、長野・岐阜県、3067メートル)の噴火から27日で1カ月を迎える。降雪で今年の行方不明者の救出・捜索活動は打ち切られ、後方支援の拠点となってきた麓の街にも日常が戻りつつある。だが、地元経済の主力である観光業は、客足が遠のき、風評被害も深刻だ。「これからどうなるのか」。噴火は、麓の生活に、今も影を落とし続けている。
「売り上げが半減した」「被災者の気持ちを考えると安全性のアピールも自粛せざるをえない」
長野県木曽町で25日、阿部守一(しゅいち)知事と地元の観光関係者らによる意見交換会が開かれ、出席者からは切実な声が漏れた。
自らもペンションを経営する木曽町観光協会の幹部は「700人のキャンセルが出た宿泊施設もある。観光客から『危ないから別の場所に泊まろう』という声も聞き、風評被害は深刻だ」と訴えた。
町商工会が、木曽町と王滝村の旅館や飲食店に行ったアンケートでは、回答した124施設のうち約7割が客足が減少したとしている。
阿部知事は「これまでは人命救助優先で取り組んできたが、(観光関係者らの)皆さんも被災者だ。御嶽山と共生していくために、一過性でない取り組みを実行していきたい」と話した。
敷地の一部が入山規制区域に入っている王滝村のスキー場「おんたけ2240」は、今シーズンの営業の見通しが立っていない。例年なら慌ただしく従業員らがオープンの準備に動き回る時期だが、今は「通行止」の看板が掲げられ、閑散としている。
運営会社の栗屋文則総支配人は「再び噴火があったときに避難をどうするのか、という問題も考えないと営業はできない」と厳しい表情を浮かべた。
従業員は「噴石や火山灰の影響もないのに…。営業できると信じ、できる限りの準備をするしかない」と漏らす。
王滝村は就業人口の7割が観光関連の仕事に携わる。おんたけ2240は村唯一のスキー場で、人口約860人の村に昨シーズンは約6万8000人の集客をもたらした。村おこし推進課の大家親課長は「休業が長引けば、村民の暮らしが不安定になる」と話す。
入山規制範囲外の御嶽山4合目にある「純和風ペンション銀(しろがね)」は、10月中の約40人の予約が、ほぼキャンセルになった。経営する芝和子さんは「ここは危険とは無縁なのに開店休業状態。生活はどうなるのか」と顔を曇らせた。
木曽町も危機感を募らせる。麓の「開田高原マイアスキー場」は規制区域外のため噴石の懸念などもなく営業する方針だが、客足は未知数だ。
噴火の数日後、木曽町観光協会に、ある団体からのキャンセルがあった。協会は、御嶽山から離れたコースも提案したが、主催者側は「ちょっとイメージが…」と拒んだという。須藤邦男事務局長(58)は「何も言えなくなった」と振り返る。
大勢が犠牲となった御嶽山の噴火。風評を打ち消そうとするアピールは「不謹慎だ」との批判もある。須藤事務局長は「実際に来てもらい、噴火の影響がない現状を見てもらうのが一番なんだが、思うようにはいかない」と、苦悩を漏らした。(SANKEI EXPRESS)
≪献花台に人絶えず 山頂に向け祈り≫
長野県木曽町が御嶽山を望む町内の「太陽の丘公園」に設置した献花台には訪れる人の姿が絶えない。25日も大勢の人が犠牲者の冥福を祈った。
長野県安曇野市の松本市職員、岡沢優樹さん(29)は両親らと訪れた。噴火1週間前の同じ時間に、御嶽山の火口付近にいた。御嶽神社を参拝して写真を撮っていたという。報道などで犠牲者の情報に接する度に自分自身と重なった。
「1週間遅かったら自分も犠牲になっていたかもしれない。亡くなった人や行方不明の人のことを思うと胸が痛い」。岡沢さんは山頂の方に目を向け、そっと手を合わせた。
午後には、長野県の阿部守一知事も姿をみせ、「心から冥福を祈ると同時に噴火の対策に全力で取り組むと誓った」と述べた。
献花台は、長野県王滝村も御岳高原に設けている。(SANKEI EXPRESS)