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【御嶽山噴火】警戒情報 登山者への提供どこまで

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【御嶽山噴火】警戒情報 登山者への提供どこまで

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水蒸気があがる御嶽山(おんたけさん、3067メートル)。臨時ヘリポートに着陸する大型輸送ヘリは、天候回復を待って人員輸送を始める予定だった=2014年9月30日午前、長野県木曽郡王滝村の松原スポーツ公園(山田哲司撮影)  御嶽山(おんたけさん)では噴火の約2週間前に地震が増えたが、一般への情報提供は不十分だった。登山者の多くは無警戒だったとみられ、情報伝達に課題を残した。

 「レベル1」のままに

 御嶽山で火山性地震が増え始めたのは9月10日。この日だけで52回、翌日も85回を観測し、気象庁は11日に火山解説情報を発表し山頂付近で火山灰が噴出する可能性があるとして警戒を呼び掛けた。

 気象庁はこの情報をホームページに掲載したほか、地元自治体にも提供。しかし、マグマ活動に関連する火山性微動や地殻変動は観測されなかったため、噴火警戒レベルは1(平常)のままとし、自治体に対し登山者への警戒呼び掛けなど新たな対応を求めることはなかった。

 情報提供を受けた岐阜県下呂市防災情報課は「地震の多発を注視していた。しかし、その後は減っており、噴火につながるとは考えず外部に発信しなかったのが反省点」という。

 気象庁火山課は「自治体に手厚く説明できたか、一般への呼び掛けが分かりやすかったかなどを検討し、情報利用のあり方を考えたい」としている。

 山谷えり子防災担当相は30日の閣議後会見で「情報提供のあり方を今後、考えていく」と述べ、検証する考えを示した。

 噴火予知が難しい中で、前兆とは確認できていない段階での情報を、登山者にどう伝えたらよいのか。

 2000年の噴火で予知に成功し、初の事前避難が実現した有珠山(うすざん)。地元の北海道洞爺湖町は周辺住民の避難計画は策定済みだが、登山者への情報周知の体制は未整備だ。「今回のように予兆を事前に把握できない噴火は想定していなかった。情報をどう伝えたらよいかが抜け落ちていた」(企画防災課)と話す。

 静岡県は富士山噴火の避難計画を作成中で、「どういうタイミングで登山者に警戒情報を伝えるか考えていかなければならなくなった。メーリングリストなどに登録してもらい、リアルタイムで登山者に情報を直接流すことも考えられる」(危機情報課)という。

 福島県は今回の御嶽山噴火の前から、専門家を交えた火山の防災協議会を11月にも立ち上げることを予定していた。「避難計画の策定状況などを議論するが、情報伝達のあり方は今回の教訓として議題になる」(災害対策課)としている。

 防災無線の整備を

 火山の啓発活動をしている磐梯山(ばんだいさん)噴火記念館(福島県北塩原村)の佐藤公(ひろし)副館長(58)は「予兆がない噴火に備えて、山頂付近に防災無線を早急に整備すべきだ。登山口には電光掲示板などで直近の情報を流すことで、登山客に判断の材料としてもらうことも重要だ」と提案する。

 日本山岳協会の小野寺斉(ひとし)常務理事は「現在は登山者同士で情報のやり取りをしているが、今後はこうした災害情報を協会でも共有し、情報ルートに入れていかなくては」と話す。

 ただ、地震増加などの情報を単に伝えるだけでは、かえって誤解や混乱につながる恐れもある。避難や入山規制などの防災対応は、気象庁の噴火警戒レベルに基づいて行う体制になっており、今回のようにレベルの引き上げがない段階での情報活用は難しい。

 東大地震研究所の中田節也(せつや)教授(火山学)は「情報伝達の仕方を工夫する必要はあったが、一般の人が地震増加などの情報を突然受けても、危険性がどの程度あるのか判断できない。十分に理解できるようにして伝える必要があり、実際は簡単なことではない」と指摘する。その上で中田教授は「情報がなかったことを後追いのように議論するのではなく、自然災害について真剣に考える社会全体の姿勢や教育が重要だ」と話した。

 ≪噴石直撃、気道熱傷が死因か≫

 多数の死傷者を出した御嶽山の噴火。警察は死亡が確認された人の死因を公表していないが、多くの負傷者の応急処置に当たった病院関係者は、死因の多くは噴石の直撃や熱風を吸い込んだことによる気道熱傷との見方を示している。

 山頂付近にいた時、噴火に遭遇した茨城県ひたちなか市の鈴木貴浩さん(35)。一緒にいた大学時代の後輩の女性(35)が噴石を脚に受けて意識不明となった。脚は不自然に折れ曲がり、大量出血していた。止血し、心臓マッサージをしたが、鼓動が止まったのが分かったという。

 埼玉県熊谷市の加藤佳幸さん(29)は降り注ぐ噴石から身を守ろうと、とっさに頭を両腕で覆った。山小屋に逃げ込む余裕もなく、その上から岩や石が容赦なく打ち付け、鎖骨や腕など6カ所を骨折した。

 死亡が確認された静岡県御前崎市の会社員、増田直樹さん(41)は頭部を噴石が直撃。遺族は警察から脳挫傷が死因と説明を受けたという。

 29日までに計61人のけが人が運ばれた長野県立木曽病院によると、このうち9割が噴石が直撃したことによる骨折・打撲や、熱風を吸い込んだことによる気道熱傷だったという。

 井上敦院長(60)は搬送された患者について「重傷者の大半が噴石や熱風によるもの。中には落下物が頭や胸に当たり、脳出血や肺損傷の疑いのある患者もいた。落下物の当たり方や打ち所が生死を分けたのではないか」と話した。(SANKEI EXPRESS

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