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社会
【御嶽山噴火】「早く静かになれ」募る焦り 活動活発化で捜索中断
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長野・岐阜両県にまたがる御嶽山(おんたけさん、3067メートル)=※カシミール3Dで作製 長野、岐阜両県にまたがる御嶽山(おんたけさん、3067メートル)の噴火で、長野県警と消防、陸上自衛隊は30日、火山活動が活発化しているため、心肺停止状態のまま山頂付近に取り残された登山者らの救助・捜索活動を途中で打ち切った。火山活動と有毒ガスに阻まれ、この日は1人も救助できなかった。「早く山が静かにならないのか」と、現場の隊員らはもどかしさを口にし、安否不明の登山者の家族らは「自分ではどうしようもできない」と焦燥を募らせた。
長野県によると、この日は約850人態勢で、山頂付近に取り残されている心肺停止状態の24人の登山者を搬送するとともに、山中に取り残されている恐れがある連絡の取れない登山者を捜索する予定だった。
陸自はこれまで使用していた輸送人員14人の中型ヘリコプターに替わり、55人を運べる大型ヘリ「CH-47」2機を投入し、180人を山頂付近に送り込む計画だった。地上からの捜索隊は早朝に長野県側の王滝登山口から山頂を目指し入山を始めた。
しかし、30日午前6時すぎから、火山性微動の振れ幅が大きくなり、気象庁によると、噴火当日の27日夜と同程度になった。このため、活動を一時中断。長野県災害対策本部では1時間おきに県、警察、消防、自衛隊などの職員が検討し再開のタイミングを計った。現場の自衛隊からはヘリで少数の部隊に絞って現場に投入したいとの提案も出されたというが、危険な状況は変わらず、全ての活動が中止された。
この日は、28、29日にも活動中断を余儀なくされた原因である有毒な硫化水素に対応するため、防毒マスクや高性能検知器の新装備も準備されていた。捜索を行うことができれば、数時間に限られていた活動を延ばすこともできたという。
だが、山頂付近は硫化水素濃度が上昇し、再噴火の恐れも。緊急消防援助隊愛知県大隊の渡辺勝己大隊長(51)は「1人でも多く連れ戻したいが、自分の身を守れない環境では救出活動はできない」と話した。すでに心肺停止状態の16人をすぐにヘリに収容できる地点まで運び終えているほか、新たに5人の位置も確認していた。
陸自第13普通科連隊の田中浩二3佐(54)は「活動ができていれば、16人と5人は収容できたのではないかと思う」と悔しさをにじませた。
一方、長野県木曽町役場には朝から不明者の家族や友人ら約80人が待機。午後3時ごろに救助活動の中止を伝えられると、「一刻も早く再開してほしい」との強い声が上がったという。
息子が安否不明のままの名古屋市の女性(60)は、「早く見つけてほしい。それだけです」と言葉少なに語った。不明となっている愛知県刈谷市の男性の父親は「本当に残念でならない。でも自分ではどうしようもできない」と疲れた表情をみせた。40代のいとこが不明という愛知県半田市の男性は「もどかしいが、山のことだから…」と悔しそうに話した。
今回の噴火ではこれまでに12人の死亡が確認され、東京都中央区新川の会社員、上方麻衣さん(31)ら全員の身元が特定された。(SANKEI EXPRESS)