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麻薬市場の「皇帝」 前市長夫妻を拘束 メキシコ 学生襲撃指示の疑い

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麻薬市場の「皇帝」 前市長夫妻を拘束 メキシコ 学生襲撃指示の疑い

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メキシコ・ゲレロ州イグアラ  今年9月下旬、メキシコ南西部のゲレロ州イグアラ市で大学生6人が殺害され、43人が行方不明になっている事件で、連邦警察は4日、逃亡していたイグアラ市の前市長とその妻の身柄を拘束した。検察によると前市長は麻薬組織に200万~300万ペソ(約1700万~2500万円)を定期的に支払い、一部が地元警察に賄賂(わいろ)として流れていたといい、前市長がデモを計画していた学生たちの襲撃を地元警察に指示した疑いがもたれている。地方自治体の首長と麻薬組織の根深い癒着が改めて浮き彫りになったことで、麻薬組織絡みの凶悪犯罪の撲滅を宣言し、2012年に就任したメキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領(48)も苦境に立っている。

 辞職して逃亡

 11月4日付のAP通信やフランス通信(AFP)、英紙デーリー・テレグラフ(電子版)などによると、拘束されたのは、前市長のホセ・ルイス・アバルカ容疑者とその妻のマリア・デ・ロス・アンヘレス・ピネダ容疑者。自分たちに捜査の手が伸びたことを察知した先月、市長を辞職し逃亡。最重要指名手配犯として追われていたが、労働者が多く暮らすメキシコシティー近くのイスタパラパ地区に借りていた小さな民家に隠れているところを4日未明、拘束された。

 ゲレロ州は国内でも麻薬絡みの凶悪犯罪が多いが、地元の麻薬組織で米シカゴのマリフアナ・ヘロイン市場を牛耳る「ゲレロス・ウニドス」の活動を仕切っていた夫妻は“皇帝夫婦”と呼ばれ、恐れられていた。

 とりわけ妻、ピネダ容疑者の兄弟はゲレロスのリーダーの一人で、先月中旬逮捕されたばかり。別の兄弟も2000年代のメキシコを大混乱させた麻薬組織「ベルトラン・レイバ・カルテル」(10年に壊滅)のメンバーで、09年、リーダーを裏切り処刑された筋金入りのワルだ。

 こうした麻薬組織との関係を背景に、夫妻はショッピングセンターや宝石店、牧場など市内に65の優良資産を所有。複数の地元民はAFPに「妻に10ドルの請求書を渡したら『それはゴミ?』と言われた」「夫は独裁者で100ドル以下は金と思っていない」などと証言した。

 国内外から非難

 そんな夫妻が仕組んだとみられる事件は9月26日に起きた。

 近くの教育大学の学生43人が、68年にメキシコ市で起きた民主化を訴える学生を警察と軍が大量射殺した「トラテロルコ広場虐殺事件」の追悼デモに参加するためバスを盗み、市の南200キロのイグアラ市を走行中、地元警察がバスに発砲。その後43人はゲレロスに引き渡され、行方不明になった。今月5日、州検察は、ゲレロスと警察が裏でつながり、ゲレロスのリーダーが殺し屋2人に学生の拉致と殺害を指示。2人が17人を連れ去り、アジトで殺したことを自供した、と発表した。

 市長が麻薬組織とのつながりを利用して警察を裏で操っていたことについて、ニエト大統領は「メキシコの全国民は大変な驚きと憤りを共有している」と怒ったが、この事件では、麻薬組織の取り締まりを求めるメキシコ国民が各地で抗議デモを展開。ニエト政権は国内外から非難を浴びている。

 メキシコではフィリペ・カルデロン前大統領(52)が06年の就任時に麻薬組織の撲滅を宣言して以来“麻薬戦争”が勃発。死者・行方不明者は計10万人を突破した。(SANKEI EXPRESS

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