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科学
子供に銀杏は注意 大和田潔
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
秋に街を彩る黄金色のイチョウ。その実が銀杏(ぎんなん)です。土に埋めて果肉を腐らせて種だけ取り出す方法を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。私も、曽祖母がバケツから庭に強烈なにおいのベージュの実を埋めていたことを思い出します。現在では厚手のポリ袋に入れて踏みつぶして果肉を外し、種子を取り出しているようです。果肉には、かぶれる成分が含まれるため手袋が必須です。
種子は雌の木になります。裸子植物であるイチョウの独特の受精方法と種子のでき方は、生物の授業で学びます。平瀬作五郎先生(東京大学)が、大正時代に種子植物なのに精子があることを世界で初めて発見しました。彼はもともと画家で、植物学の助手をしているうちに大発見をしたとのことです。ソテツの精子を発見した池野成一郎博士の協力によるもので、博士の発見とともに日本の植物学の輝ける業績となっています。今でもこのイチョウの株は、東京大学小石川植物園に残っています。
銀杏は、硬い白い殻を割ると美しい翡翠(ひすい)色の実が現れます。銀杏の実は、ローカロリーでビタミンが豊富です。炭水化物やタンパク質も含まれるため、独特の香ばしさとともにうま味を感じます。せきを鎮めたり、血流改善効果があるとも言われています。
昔から、肺病や結核でせきが止まらないときに炒(い)った銀杏や油につけた銀杏を薬のように食べていたとのことです。
銀杏は中毒を起こすことが知られています。「ぎんなん中毒」と呼ばれます。食べられる許容範囲は、大人は20~30粒まで、子供は5粒までと言われています。銀杏に含まれるギンコトキシン(MPN)が脳のビタミンB6の働きを阻害して、けいれんを引き起こしてしまうためです。そのメカニズムを解明したのも、日本の和田啓爾(けいじ)先生(北海道医療大学薬学部)でした。
先日、下関で開催された医学会へ出席した折に、北九州空港で夕日に輝く大粒の銀杏をひと包み購入してきました。旬のため立派なものでした。焼き魚のそばにあっても、茶碗蒸しの中に入っていても、塩焼きで置かれているだけでもさまになる銀杏。食べ過ぎにだけは注意することにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)