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科学
カラーコンタクトレンズに注意 大和田潔
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
目は角膜を通して映像を見ています。角膜は不思議なことに、透明な薄い膜です。人間の体で透明な部分はほとんど見あたりません。光学的に優れたドーム状の形を保持しています。私たちは、角膜のおかげで鮮明な画像を見ることができます。
私たち医師は、光を当てて黒目である瞳孔が収縮する反応、瞳孔反射というものをよく確認します。例えば眼圧が急上昇して痛みと視力障害が出現する緑内障の発作の際や、脳に病気が起きると瞳孔反射に異常が出現します。
瞳孔反射は、生命活動の指標にもなります。瞳孔は、目に入った光の量に応じて大きさを変えています。強い光を受けると、瞳孔が収縮して目の中に入る光量を一定に保とうとします。この反応は命に直結する脳の中枢に近い部分を介した反応であるため、生命活動の指標とされています。目に光を当てて瞳孔反射が消失したことを医師が確認し、「ご臨終です」と述べる場面を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。
まつげを触るとまぶたを閉じようとする反射である睫毛(しょうもう)反射というものもあります。異物が目に入りそうになったと感じて、目をつぶろうとする反射です。脳を鎮静化させる麻酔が覚めてくると、睫毛反射が回復してきます。麻酔科の先生が、どう見ても麻酔が覚める頃なのに睫毛反射が回復しない女性に焦ったという話を産科医だった父親から聞いたことがあります。なんと彼女は、非常に巧妙に貼り付けたつけまつげだったので反射が起きなかったわけです。
先日もクリニックで若い女性の瞳孔反射を見ようとしたところ、カラーコンタクトレンズを装着されていました。黒目は一定の大きさに作られているので、瞳孔反射を観察することができませんでした。カラーコンタクトレンズには角膜に大きな負担をかける粗悪品も交ざっているとのこと。カラーコンタクトレンズによる角膜のトラブルが急増していて、失明の危機に瀕(ひん)している人もいるという報道がなされました。
角膜が再生する力を超えて障害を起こしてしまうと、取り返しがつかないことになります。健康の上に美は成り立つことを銘記しましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)