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「気象病」が多くなる秋 大和田潔
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
秋は、気圧も気温も変化が大きい季節です。今年は「雨台風」と呼ばれる大雨を伴う台風が多く、甚大な被害をもたらしました。「ひと月分の雨が一日で降りました」といった大雨の表現が各地から報道されました。ニュース番組の出演でスタンバイしていた9月上旬にも、北海道の大雨のニュースが繰り返し流れていました。日本列島をゆっくりと通過する台風が多く、天候不順が続きました。
海の上で発生してくる熱帯低気圧のうち、中心付近の最大風速が風力8以上のものを台風とよびます。風力だけでなく、中心の気圧も低いことが特徴です。大気圧である1気圧は1013hPa(ヘクトパスカル)ですが、台風の中心は925hPa(1961年9月16日、高知県室戸岬)にまで低下したりします。
雨の時には気温が下がることもよくあります。寒冷前線が通過するときなど、急にひやっとしたと思ったらザーッと雨が降ってくることを経験された方も多いでしょう。7月には「急に真っ暗になり、寒くなってきたと思ったらガランガランとひょうが降ってきた」とおっしゃっていた患者さんがいらっしゃいました。「急に暗くなってきたときに、前に痛めた腰がいたくなって、だんだんぜんそくも調子悪くなって…」とも訴えられていました。
このように、気象の変化で体調を崩してしまうことを「気象病」とよびます。急激な気圧の低下が、心筋梗塞のリスクとなるという報告がAmerican Journal of Cardiologyという権威ある雑誌に掲載されているように、天候の変化が重篤な病気の引き金になることも知られています。
ぜんそくで呼吸がゼイゼイしてくることで、天候の悪化を言い当てていた患者さんにお目にかかったこともあります。
周りの環境の変化に負けずに体内の環境を一定に保とうと、いつも私たちの体はけなげに頑張ってくれています。規則正しい生活と十分な休息は、環境の変化への対応力を高めます。軽い運動を日頃から行って、体の血液循環を活性化して自律神経を整えておくことも有効です。天候の変化が繰り返しやってくる秋は、いつも以上に体調を整えることに気を配って過ごすことにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)