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日本発の新しい糖尿病治療薬 大和田潔

 秋に健康診断を受ける方も多くいらっしゃいます。30代から40代になってくると、だんだん体重が増えてくる人が多くなります。それにつれて血圧が高くなってきたり、血糖値が高くなったりしてきます。放置できない値になった場合には、医療機関の受診を勧められ薬剤の助けが必要になります。

 最近はいい薬が使えるようになりました。血圧は、体に分布する血管の太さで変化します。血管を流れる血液は、一定の量です。血液を流す血管が収縮して体積が減れば血圧が高まり、血管が拡張して体積が増えれば血圧が下がります。

 血管はカルシウムの力を借りて収縮しています。そこで、血管の細胞にカルシウムが取り込まれにくくなる薬剤であるカルシウムチャンネル阻害薬というものが開発されました。また、血圧を上げるホルモンであるアンジオテンシンの働きを弱める、アンジオテンシンII受容体拮抗(きっこう)薬もよく使われるようになりました。血液内の水分を排泄(はいせつ)する利尿薬なども用いられています。

 糖尿病の治療では、インスリンの働きを高める薬剤がよく使われます。最近、SGLT2阻害薬という新しいメカニズムの治療薬が登場しました。もともと、リンゴやナシを皮ごと食べると、糖尿病ではなくとも尿糖が出現することが知られていました。腎臓に作用するフロリジンが尿糖を引き起こしていることが発見されました。

 腎臓はいったん不要なものと一緒に糖を漉(こ)し出した後、SGLT2というタンパク質を通して再吸収しています。フロリジンはその糖の再吸収を邪魔して尿中に糖を残すため、尿糖が出現していました。ところがフロリジンそのものは、分解されやすかったり腸にも働いてしまったりするため、血糖値を下げる薬剤にはできませんでした。

 そこでフロリジンを改良して腎臓のSGLT2だけを選択的にブロックする、SGLT2阻害薬という薬剤が日本で開発されました。余分な糖を尿から捨てることができる、新しいメカニズムの薬剤です。膵臓(すいぞう)を刺激してインスリンを増やす薬剤ではないため、膵臓に負担がかかりません。糖尿病の薬剤は次々に市場に現れていますが、日本はその開発の一翼を担っています。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

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