ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
経済
ホンダ 「自主的」リコール全米拡大 欠陥エアバッグ問題
更新
米議会公聴会に出席したタカタの清水博・品質保証本部シニアバイスプレジデント(左から2人目)と北米ホンダのショステック上級副社長(左から3人目)=2014年12月3日、米国・首都ワシントン(AP) 日本の自動車部品メーカー、タカタのエアバッグが作動時に破裂して金属片をまき散らす可能性がある問題で、ホンダは3日、米下院エネルギー・商業委員会小委員会の公聴会で、原因究明のために行っている運転席エアバッグの自主的な調査リコール(無料の回収・修理)の対象を、これまでの高温多湿地域から全米に拡大すると表明した。
公聴会で証言した北米ホンダのリック・ショステック上級副社長は対象地域拡大の理由について「顧客が懸念を抱いている」ことを挙げた。タカタによる運転席エアバッグのテストでは破裂は確認されていないため、欠陥が確認された場合に法律に基づいて行われる正式なリコールではなく、あくまでも自主的な調査名目のリコールで対応する。
一方で、ホンダは高温多湿地域のみで行っている助手席エアバッグの正式なリコールについては、全米規模への拡大を見送った。タカタによるテストでは助手席エアバッグの破裂は高温多湿地域から回収されたものだけで確認されており、ホンダは「正式なリコールを全米に拡大するだけの根拠がない」としている。
米道路交通安全局(NHTSA)幹部は公聴会で、湿度が高くないカリフォルニア州やノースカロライナ州でも運転席エアバッグの破裂事故が起きていることを理由に、改めて全米規模でのリコール実施を主張した。
幹部はタカタが破裂事故の原因は調査中だとして全米規模でのリコールに消極姿勢を示していることについて、「タカタの対応には深く失望している」と批判。「タカタと自動車各社に全米のドライバーの安全を確保させるための適切な措置をとる」として、タカタなどにさらに説明を求める方針を示した。(ワシントン 小雲規生/SANKEI EXPRESS)
≪国内でも280万台近く 国交省、異例の実施指示≫
タカタ製エアバッグの欠陥問題で、ホンダが調査リコールの対象を全米に拡大したことを受け、国土交通省は4日、日本でも自動車メーカー各社に調査リコールを実施するよう指示する方針を固めた。国交省が調査リコールを指示するのは初めて。4日には、日本国内での正式リコールの対象車数もさらに増え、計約279万台に上った。
日本での正式なリコールは、保安基準を満たさない恐れがあり、不具合の原因が判明したものについてメーカーが道路運送車両法に基づいて国交省に届け出る仕組み。一方、今回の調査リコールには根拠となる法令はないが、国交省は米国でエアバッグの欠陥が社会問題化していることを重視。「米国に歩調を合わせる」とし、異例の行政指導という形に踏み切る。
また、トヨタ自動車は4日、タカタ製の助手席エアバッグに不具合があるとして、「カローラ」「ノア」など19車種計18万5093台の正式リコールを国交省に届け出た。国内では2009年以降、タカタ製エアバッグの不具合で、トヨタやホンダ、独BMWなどがリコールを届け出ており、国内でのリコール対象車は11社で計約279万4668台に上っている。ただ、このうち100万台以上が依然として未修理の状態となっており、国交省では先月、対策推進本部を設置。自動車メーカーに対して早期修理や情報収集を指示している。
自動車メーカーも事態の沈静化に懸命だ。トヨタは修理対象を特定するため、第三者機関による製品試験を計画。他メーカーにも参加を呼び掛けた。国内ではこれまでに、ホンダ、日産自動車、マツダ、富士重工業、三菱自動車が参加方針を示しており、業界横断で原因究明に当たる。自動車メーカーからは「もはや一部品メーカーの問題ではない。放っておけば日本車全体のイメージダウンにつながる」(日産関係者)との声も上がっている。(SANKEI EXPRESS)
≪タカタ トヨタの教訓生かせず≫
エアバッグの欠陥問題が米国をはじめ日本など世界に飛び火し、タカタの責任を追及する動きが強まっている。タカタは3日の米下院の公聴会で自動車メーカーのリコールに全面協力する姿勢を表明したが、議会やNHTSAの不満が鎮まる気配はない。トヨタ自動車が4年前にリコール問題を乗り切ったように、失った信頼を取り戻せるか、タカタには一刻の猶予もない。
タカタは元米運輸長官をトップとする品質保証委員会の設置や交換部品の増産などの対策を用意し、公聴会に臨んだ。だが、リコールの全米拡大を明言せず、自動車メーカー任せの姿勢に批判が噴出。NHTSAも強硬姿勢を鮮明にした。
タカタは1933(昭和8)年に織物会社として創業し、日本初の2点式シートベルトなどを製造。製品への信頼性は高く、財務も健全な「自動車部品の優等生」(国内自動車メーカー)とされてきた。
高田重久会長兼最高経営責任者(CEO)は創業家出身。これまでホームページで謝罪や安全確保に取り組む声明を発表してきたが、ステファン・ストッカー社長も含め公の場での説明は行っていない。
リコールは消費者と接点のある自動車メーカーが実行するのが一般的だ。部品メーカーは製造責任を負うが、前面に出て対応しにくい事情もある。ただ、問題が拡大する中、「安全の要求が高まっているのは業界の常識。なぜトップが表に出てこないのか」(部品大手)との批判は高まる。
ここで思い出されるのが2009~10年のトヨタ自動車のリコール問題だ。全米で“トヨタ叩き”が吹き荒れる中、豊田章男社長は10年2月に米議会の公聴会に出席。創業家出身の豊田社長は「すべてのトヨタ車にわたしの名前が入っている」と述べ、自身が先頭に立ち、安全・品質を最優先する決意を表明した。
合わせて、グローバルな品質管理体制を再構築し、現地メディアに生産現場を公開するなど、信頼回復への対応を加速。「潮目は変わり、トヨタに理解を示す米国の議員やメディアが増えていった」(幹部)。
タカタのエアバッグ問題は米国だけでなく、世界に広がる兆しを見せている。リコール対策費用だけでなく、当局からの制裁金や訴訟費用がかさめば、経営が揺らぎかねない。事態の収束には、経営陣が先頭に立って、丁寧な説明と安全確保に向けた取り組みを行っていくことが欠かせない。(田村龍彦/SANKEI EXPRESS)