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【クルマの達人】乗り心地 高級セダン並み トヨタ「MIRAI」試乗レポート

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【クルマの達人】乗り心地 高級セダン並み トヨタ「MIRAI」試乗レポート

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試乗会が行われたトヨタの新型燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」=2014年11月19日、東京都江東区(早坂洋祐撮影)  トヨタ自動車は19日、12月15日に発売する新型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の報道関係者向け試乗会を東京・台場で開いた。「ワクワクするエコカー」(豊田章男社長)を目指した世界初の市販向けFCVは、高級車にも負けない乗り味をみせてくれた。

 際立つ静粛性

 運転席に乗り込むと、一人きりの車内は静寂に包まれた。FCVはガソリン車のようなエンジン音がしないことで逆に運転中の風切り音などが気になるため、遮音性の高いガラスを全ドアに採用するなど静粛性には人一倍気を使っている。

 水素と酸素の化学反応で電気を作りモーターを回すFCVは、電気の作り方を除けば電気自動車(EV)と変らない。ただ、走り始めると印象は変った。音もなく静かな出だしはEV同様だが、試乗コースの直線でアクセルを踏み込むと、加速とともに「フュイーン」という独特な音が高まった。

 これはタンクから燃料電池に水素を送り込むポンプの音。開発陣は当初、音を消すことも検討したが、「走る喜び」を体感できる味付けとして残した。

 アクセル操作への反応は素早く、時速100キロまで9.6秒で加速する。56キロの重たい燃料電池を床下に収納するため、重心が低くなり、カーブでもふらつきはなく安定していた。

 内装はシンプルだ。カーナビゲーション画面の下にもう一つの液晶パネルを設けた近未来的なデザインが特徴だが、禁欲的なほど余計な装飾はない。723万6000円(補助金込みで約520万円)もする高額な車と考えると、やや物足りない感じもした。

 自慢の水抜き

 最後に、開発陣のお気に入りという「ウオーターリリーススイッチ」を押してみた。水素と酸素で電気を作る際に唯一発生する水を、立体駐車場など下に漏れるとまずい場所へ入る前に抜くための装置だ。放出口は車体後部の床面下。水蒸気が立ちこめた後、機材で温められた水がちょろちょろと流れ落ちた。

 「クラウンに負けない乗り心地」をうたう新型FCVは予想以上に快適だった。ただ、問題は燃料を充填(じゅうてん)する水素ステーションの少なさだ。個人が使える商用ステーションは現在、国内で2カ所しかなく、計画中を含めても45カ所にとどまる。実は自宅近くの実証用ステーションが来年2月には商用へ衣替えするのだが…。もう少し様子を見るべきだろうか。(田辺裕晶/SANKEI EXPRESS

 ≪「普及しなければ意味がない」 開発責任者・田中義和主査≫

 ――今年度中としていた発売日を年内に間に合わせた

 「燃料電池車はインフラがないと走れない車。車が出ないとインフラ整備は進まない。少しでも早く出したかった。リースではなく、売り切りで出したのはわれわれの本気度と理解してほしい」

 ――価格を723万6000円に設定したのは

 「環境のことを考えると普及しなければ意味がない。普及価格かといえばノーだが、(補助金込みの価格は)500万円台。一般の方に買いたいと思ってもらえるギリギリの線になっていると思う」

 ――燃料電池車はかつて1億円といわれた

 「試作段階に比べて燃料電池システムのコストを20分の1にした。(高価な)白金の使用量を減らしたうえ、量産化にメドがついたことが大きい。(コストのかかる)精緻な機械加工が手頃にできる技術を磨くなど、積み重ねていけば(価格は)まだ下げられる」

 ――独BMWと共同開発した車を2020年に投入する

 「お互いに得意な技術があるので、相乗効果を出せるよう開発を進めたい。多くのメーカーが燃料電池車を出すことで、普及への確かな一歩になる」(SANKEI EXPRESS

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