ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
エンタメ
生き方編 クリスマスの思い出
更新
「IKKO_心の格言200」(IKKO著/エムオン・エンタテインメント、1111円+税、提供写真)
もうすぐクリスマスですね。みなさんはどう聖夜を過ごされますか?
私はといえば、仕事。上京して以来、毎年クリスマスは仕事で、休めたことはありません。ヘアメークの仕事をしていたときは、NHKの紅白歌合戦に裏方として関わっていましたから、かつら作りで精いっぱい。雑誌の撮影もたくさん入っていて、まさに死にものぐるいの大変さでした。
クリスマスという言葉に思い出すのは、まだ妹も生まれていなかった頃の幼い日の風景。うちは父がパンの仲卸しの仕事をしていまして、クリスマスはケーキの納品で大忙しでした。母も美容室の仕事でてんてこ舞い。子供たちは、1人は父の配送を、1人は美容室の掃除、1人は家の中の片づけを手伝います。それが片付いたら、子供たちは隣の町へ、この時は特別に巻き寿司の買い出しに出かけます。当時は九州の田舎では、隣町まで行かないと巻き寿司も売っていなかった。まだまだ物もない時代でしたからね。ケーキも生クリームではなく、バタークリームで…。
思い出の中のクリスマスは、九州に珍しく、雪が降った年のことです。2人の姉と一緒に、隣町まで買い物に行ったのだけれど、バスが1時間待たないとやってこない。姉が、「そんなに待つんだったら、もう歩いて帰ろう」と。みんなで手をつないで、雪の中を歩いて帰りました。けれど慣れない雪に足を取られて、坂道を転ぶように歩いて…。「姉ちゃん、寒か…。足が痛か…。もう歩けんしね…」。思わずこぼす私の手を引いて、姉は「なんね、男のくせに。もうちょっとで家に着くからね」と叱咤激励してくれて…。普通のおうちは、今頃みんなで温かいごちそうを囲んでいるのだろうなあ。そんなことを思ったものです。私にとってクリスマスは、ちょっと切ない、涙がぽろっと出るような思い出なのですね。
そんな私ですが、もう一つ特別なクリスマスがありました。あれは、まだ私が美容師をしていた27年近く前のこと。テレビで『女が階段を上る時』という作品が放送されていました。銀座のホステスさんが、女の道を駆け上がっていく姿を描いた作品なのですが、登場する女優さんのアップスタイルの美しさに心奪われてしまったのです。「どうしたらあんなアップを作れるんだろう」と。これからはヘアメークの時代になるとも思いました。
翌日、その作品を担当していたヘアメークの先生に電話して、「カバン持ちをさせてください」と頼み込みました。日中は美容院で働いて、それ以外の時間は先生について勉強させていただいて。先生のスタイルを学びながら、それをもとに私らしいアップを確立できました。
あのとき、あの作品を見ていなかったら、全く別の人生だったでしょう。IKKOという名前ではなく、今も美容師をしていたかもしれません。あの夜が、私にとっての人生のターニングポイントでした。そう考えると、あれは神さまからのクリスマスプレゼントだったのかもしれません。
みなさんには、どんなクリスマスの思い出がありますか? 家族や恋人、友だちとパーティーをする方も多いと思います。もしくは、私のように仕事という方もいらっしゃるでしょう。特別なことをするにせよ、しないにせよ、クリスマスは幸せな気分でいたいですよね。おうちでテレビを見るだけでもいいから、ささやかな幸せを探して、あたたかい気持ちでいることが、何よりのクリスマスプレゼントなのだと思います。
あの日に愛を込めて IKKO(美容家 IKKO/SANKEI EXPRESS)