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愛は時間に勝てるのか 名匠が問う 映画「暮れ逢い」 パトリス・ルコント監督インタビュー
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さまざまな女優の魅力を引き出してきた恋愛映画の名匠、パトリス・ルコント監督=2014年12月3日、東京都中央区(栗橋隆悦撮影) 得意の恋愛映画で世界中の“アベック”を虜(とりこ)にしてきたフランスのパトリス・ルコント監督(67)が純愛映画の新作「暮れ逢い」(英語)のプロモーションで来日した。オーストリアの作家、シュテファン・ツヴァイク(1881~1942年)の短編小説「過去への旅」を脚色した本作では、第一次世界大戦前夜のドイツを舞台に、孤独感に押し潰されそうな若い妻と美青年の8年に及ぶ愛の軌跡が描かれている。ルコント監督は「ツヴァイクがとりわけ僕の好きな作家だったというわけではありません。恋人に抱いた強い愛情や欲望は、時間の経過とともに劣化せず、ずっと持続できるものなのか-という切り口に興味を持ちました」と映画化の出発点を説明した。
1912年、鉄鋼会社を経営する初老のカール(アラン・リックマン)の大邸宅で、大学を首席で卒業したばかりの才気あふれる新入社員、フリドリック(リチャード・マッデン)が下宿することになった。持病が悪化したため、自宅療養を余儀なくされたカールは、フリドリックを住み込みの個人秘書に任命し、日常業務への指示や報告をさせようとしたのだ。
一方、カールの妻、ロット(レベッカ・ホール)といえば、優しい夫と息子にも恵まれ、何一つ不自由のない生活を送ってきたはずだったが、次第に誠実なフリドリックの人柄にひかれていく。そんなある日、カールは突然、フリドリックにメキシコへの転勤を命じる。
やがて許されない恋へと突き進んだ2人だが、それぞれが抱くいとしい気持ちを言葉で相手に伝えようとはしない。ルコント監督は、恋の行方に浮足だった観客たちをわざとじらして楽しんでいるかのような、極めて抑制の効いた演出を選んだ。「それはフリドリックの緊張感を表現したものです。本来は手の届かない、自分よりも地位の高い女性に対し、ひそかにアプローチした彼の心情を忖度(そんたく)しました。その緊張感は、原作を読み進める僕に猛烈な勢いで語りかけてきたものです。秘めた恋というのは、僕が知らない感情ではありませんしね」
パルドン? 過去に何があったのか、恐る恐る確認してみると、ルコント監督は“裏帳簿”に記した恋愛遍歴にモザイクをかけながら、とうとうとその一端を開陳し始めた。「僕はよく隠れて女性を愛してしまうタイプなんです。決して誰にも打ち明けません。秘めた恋は僕に生きる力を与えてくれるんですよ。あるとき、ものすごく好きになってしまった女性に告白しないまま、終わりを迎えたことがありました。もし僕が女性に好意を伝えてしまえば、お互いの生活がグチャグチャに壊れてしまう可能性があって、結局、僕は告白を断念したんです。だからといって欲求不満に陥ることはなかったし、僕の心は『愛している』という温かな感情でいつまでも満たされていました」
また、心に秘めた恋愛対象のうち、何人かは自分の映画に出演した女優だったことも明かし、「僕の恋愛感情が映画作品にプラスになったことは間違いありません」と胸を張った。物腰の柔らかいフランス紳士が、この道40年、「恋愛映画の名匠」とうたわれる仕事師のすごみをのぞかせた。12月20日から東京・シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:栗橋隆悦/SANKEI EXPRESS)
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