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社会
保育所は迷惑施設? 建設難航も 「子供の声うるさい」「マナー悪い」 近隣住民反対
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庭に防音壁が設置されている東京都練馬区の認可保育所(画像の一部を加工しています、共同) 保育所への風当たりが強まっている。「子供の声がうるさい」「親の送迎マナーが悪い」などの苦情が目立ち、住民の反対で建設が難航するケースも。各自治体は待機児童解消に向けて整備を進めるが、関係者からは「迷惑施設なのか」とため息が漏れる。
東京都練馬区の住宅街に2007年にオープンした保育所。窓は二重サッシで、庭の一角には約1000万円をかけた高さ3メートルの防音壁が取り付けられている。計画段階で周辺住民から“騒音”を心配する声が上がったのが理由だ。
外遊びの時間も制限している。1クラスずつ交代で計1時間45分。砂いじりに集中し比較的静かに遊ぶとされる砂場を住宅側に配置する念の入りようだ。それでもトラブルは収まらず、12年夏には住民が騒音の差し止めや慰謝料を求め、東京地裁に提訴した。
この保育所を含め、全国で116カ所の認可保育所を運営する日本保育サービス(名古屋市)の山口洋代表は「できればのびのびと遊ばせてあげたいが、場所によっては『子供がうるさい。殺すぞ』と、脅迫まがいの電話がかかってくることもある」と困惑する。
そもそも子供の声は騒音なのか。東京都が全62市区町村を対象にした調査では、4割が公立保育所への苦情があったと回答。都の環境確保条例は「何人も規制基準を超える騒音の発生をさせてはならない」としか定めておらず、行政としての対応を明確にするため、工場や建設工事の音と同列で扱わないようにすることを検討している。
近隣住民の反対による認可保育所の建設断念は、さいたま市で10年と13年に1件ずつ、福岡市でも13年に1件あった。福岡市の担当者は「必要のない人にとっては、保育所は迷惑施設なのかもしれない」とこぼす。子供の声以外に、住民から「保護者の送迎の車で周辺が混雑するのではないか」と指摘され事業者が交通整理を申し出たが、折り合えなかったという。
待機児童が最も多い東京都世田谷区の場合、区が保育所に適した土地を借りて事業者を選ぶことがあるが、近隣住民の了承を得るのに半年から1年以上かかることもある。どの自治体でも、長年住む高齢者らには「生活環境を壊されたくない」との意識が強いという。
一方で、住民と良好な関係を築いた例もある。東京都町田市の「ききょう保育園」は約20年前に現在の場所に移転。最初は強い反対に遭ったが、町内会に入って餅つきの場所を提供し、夏祭りや食事会に住民を招待するなど、地域に溶け込む努力を重ねた。
当時の園長だった山田静子さんは「保育園前を町内会がききょう通りと名付けてくれ、受け入れられたことを実感した」と振り返る。
山下興一郎淑徳大准教授(地域福祉論)は「サザエさんのような大家族は減り、高齢者にとって子供は人ごとになっている」と分析。「住民が立ち寄ったり、災害時に利用したりすることを提案するなど、多世代が交流できる施設として、関心を持ってもらうことが必要だ」と話している。(SANKEI EXPRESS)