ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
スポーツ
【世界自転車レース紀行】(22)ベルギー オフに人気 6日間の激走
更新
大勢の観客が駆けつけるゲント6日間レース。中央は立ち見席で、大人たちは仲間とビールを飲みながらレースを楽しんでいる=2014年11月23日、ベルギー・ゲント(田中苑子さん撮影) 冬季のヨーロッパ各地で開催されている「6日間レース」。その名前のとおり、6日間にわたって開催される自転車レースで、室内競技場を使うトラック競技だ。選手たちは2人1組のペアを組み、連日、「マディソンレース」(2選手が交代しながら走り、規定周回の先着者に与えられるポイントの合計を競う)を中心に多くのトラック種目が開催される。選手たちはチームでポイントを稼いでいき、6日間の総獲得ポイントにより勝者が決まるルールになっている。
「6日間レース」の歴史は長く、その起源は1878年にロンドンで開催された1000マイル(約1609キロ)を6日間で走る個人レースだったとされている。1日の平均走行距離は約270キロ、過酷さを極めるレースであり、当時ヨーロッパではあまり人気がなかったという。
その後、「6日間レース」は海を渡り、1891年に米ニューヨークのマディソンスクエアガーデンで開催された。競技が各国に広がっていくことで、ルールは変化していき、個人の競技から、2人1組のペアで戦う競技となり、にぎやかなMCが会場を盛り上げる興行レースへと姿を変えていった。そしてアメリカからヨーロッパに再上陸し、ヨーロッパでもロードレースのオフシーズンに開催されることもあり、しだいに人気が高まっていった。
≪トップ選手間近に 競技場包む熱気≫
現在「6日間レース」が開催されている国は、オランダ、ベルギー、スイス、ドイツなど。そのなかでも、ベルギーで唯一開催されているゲントでの大会は、自転車競技が国技といわれるベルギーにふさわしく、世界的にも高い人気を誇り、前売り券はアッという間に売り切れてしまう。
レースは毎日、夕方から深夜にかけて開催され、ビール片手に選手たちの迫力ある走りに酔いしれるのが観戦の醍醐味(だいごみ)。そのような側面から“興行レース”としてのイメージが強くなっているが、参加する選手たちは世界チャンピオンら、トラック競技のトップ選手たちであり、その戦いはUCI(国際自転車競技連合)公認の大会ではないものの、世界トップレベルのもの。選手の息遣いが聞こえそうな小さな木製の競技場は、競技が始まるとすぐに熱気に包まれる。
また今年のゲントでの大会には、これまでに「6日間レース」で22回優勝しているスペシャリスト、イーリョ・ケイセ(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ)がチームメートであるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とペアを組んで参戦した。カヴェンディッシュはツール・ド・フランスで通算25勝、2011年にロードレースの世界チャンピオンに輝いている人気選手で、アマチュア時代にトラック競技のマディソンで世界チャンピオンに輝いた経歴をもち、今回の「6日間レース」は7年ぶりの参戦となった。
そのカヴェンディッシュ組は4日目に首位に立ったが、最終日の最終種目であるマディソンでケニー・デケテル、ジャスパー・デブイスト(ともにベルギー、トップスポーツフラーンデレン)組に逆転され2位に終わる結果となった。しかし、ゲント大会のあとに開催されたチューリヒ大会では、見事に優勝した。(写真・文:フリーランスカメラマン 田中苑子(そのこ)/SANKEI EXPRESS)