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【世界自転車レース紀行】(21)日本 おもてなしでトップ選手に大人気
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晴天に恵まれた今年のジャパンカップ。大勢の観客に見守られてアジア最高峰の戦いが幕開けした=2014年10月19日、栃木県宇都宮市(田中苑子さん撮影) アジア最高峰のワンデイレース「ジャパンカップサイクルロードレース」が、10月19日に宇都宮市で開催された。日本全国から8万人を超す観客が詰めかける国内屈指の人気を誇る大会で、その起源は1990年に宇都宮で世界選手権が開催されたことに由来する。世界選手権で使用されたコースを一部使用する形で92年から、メモリアル大会としてジャパンカップが開催されるようになり、国内の自転車競技の人気の高まりを受けて、年々その規模を拡大しながら今年で23回目の開催を迎えた。
毎年10月下旬に開催されるため、ヨーロッパの全レースが終了し、ジャパンカップがシーズンの最終戦となる選手も多い。来日する外国人選手たちは、長い飛行機移動をすることになるが、その競技レベルやカテゴリーの高さだけでなく、日本のファンの温かいホスピタリティーを受けて、欧米のトップチームの中で、ジャパンカップの人気は急上昇。ついに今年は、過去最高となる7つのUCI(国際自転車競技連合)プロチームが参加を表明。過去に優勝した経験をもつダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)、ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)ら世界のトップ選手や、所属チームを引き連れて凱旋(がいせん)帰国した別府史之(トレックレーシングファクトリー)、新城幸也(あらしろ・ゆきや、ヨーロッパカー)らが国内強豪チームとともにスタートラインに並んだ。
≪果敢にアタックも 日本勢やや低迷≫
ジャパンカップは宇都宮市郊外にある宇都宮市森林公園を舞台に、14.1キロの周回コースを10周半する151キロで競われる。勝負どころはスタート直後から始まる約3キロの厳しい登坂区間の「古賀志(こがし)林道」だ。
レースはスタートすると4選手が先行したが、勝負が動いたのは終盤ラスト2周回目の古賀志林道だった。引退を表明したベテラン選手、宮澤崇史(ビーニファンティーニ・NIPPO)のアタックにより集団が活性化すると、先頭の4人を飲み込み、アタックが次々にかかる中で、先頭集団は20人ほどに絞られ、最終周回へと入っていった。9選手によるゴールスプリントの展開となり、2011年に優勝したネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)が僅差のスプリントを制して2度目の勝利をつかんだ。
ハースは、前回出場時はオーストラリアの小さなチームで出場し、ジャパンカップの優勝をきっかけにして、格上チームへ移籍した。そして3年たった現在は世界的トップ選手へと成長。ジャパンカップは彼にとって特別な思い入れのあるレースなのだ。「本当に日本も、日本のレースも、日本のファンも大好き!」。満面の笑みで立った表彰台では、しきりに日本のファンへ感謝の気持ちを伝えた。
日本人の最高位は別府史之のトップから48秒差の14位だったが、例年に比べて日本人の成績がやや低迷した印象を受ける。
11年に2位に入った西谷泰治(愛三工業レーシング)は22位。今季での引退を表明しており、ジャパンカップ優勝は、最後にどうしても欲しかった大きなタイトルだった。しかし「外国人選手たちが本気で、いいポジションをキープできなかった」と悔しさを滲(にじ)ませる。
かつてはシーズン最後のレースのため、バカンス気分で参戦する外国人選手が多くいたというが、現在のジャパンカップにそのような雰囲気は一切なく、すべての選手が真剣に戦う場所となり、ジャパンカップで優勝した選手は大成するというジンクスも生まれた。これまで日本人選手による優勝は1997年の阿部良之だけだが、レースのレベルが上がった今だからこそ、日本人選手の活躍も期待したい。(写真・文:フリーランスカメラマン 田中苑子(そのこ)/SANKEI EXPRESS)