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政治
【15年度税制大綱決定】子育て・企業重視 贈与で消費促進
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2015年度税制改正大綱を決定し、記者会見後に握手する自民党の野田毅(たけし)税調会長(右)と公明党の斉藤鉄夫税調会長=2014年12月30日午後、衆院第2議員会館(共同) 自民、公明両党は30日、2015年度税制改正大綱を決定した。人口減少を克服し経済を再生するため、子育て世代と企業に重点を置く減税策を柱とした。結婚や育児、住宅費用の贈与を非課税にし、若年層の消費を促す。法人税を先行減税する一方で企業には賃上げを要請し、アベノミクスの加速を鮮明にした。
自民党税制調査会の野田毅(たけし)会長は大綱決定後の記者会見で、食料品などの消費税率を低く抑える軽減税率に関し15年秋までの制度案決定を目指すと表明した。政府、与党で委員会を設置し、1月下旬をめどに対象品目などの検討を再開する。
法人税の実効税率は15年度からの2年間で現在より3.29%下げて31.33%(標準税率)とし、財源は3年かけて確保する。先行減税は2年で4000億円超となり、安倍政権が決めた消費税の再増税延期と合わせ財政再建は後回しにされる。減税の直接的な恩恵は黒字の大企業などに限られ、経済が好循環に向かうかどうかは見通せない。
減税財源は、赤字企業も対象となる外形標準課税の拡充や欠損金の繰り越し控除縮小などを17年度にかけて段階的に実施して捻出する。数年で実効税率20%台への引き下げを目指して改革を続けるとし、今回は見送った中小企業への増税も今後の検討課題に挙げた。
消費てこ入れは、高齢者の資産を子や孫に移す贈与税の優遇策で実施する。結婚や出産、育児費用の贈与非課税制度を新たに設け、教育や住宅購入に使える現行の非課税制度も延長、拡充する。
本社機能を東京23区から地方に移した企業の優遇税制を導入する。「ふるさと納税」も拡充し、減税対象となる寄付の上限額を2倍に上げる。エコカー減税は、自動車取得税などの燃費基準を厳しくする一方、軽自動車税にも新設する。
消費税の軽減税率に関し、大綱は「17年度からの導入を目指す」とした。配偶者控除の見直しは来年以降の課題となる。
≪法人税率2.51%引き下げ 財源確保後回し≫
2015年度税制改正の柱は法人税減税だ。実効税率を現在に比べ15年度に2.51%、16年度にはさらに0.78%引き下げ、31.33%(標準税率)にする。一方、財源確保のため赤字の大企業への課税などは強化する。企業への影響や課題を整理した。
日本の現在の実効税率は、法律で定められた標準税率が34.62%、東京都は独自に上乗せして35.64%となっている。20%台の欧州各国や中国、韓国に比べて高いため、政府は今年6月、15年度から数年で20%台に下げる方針を掲げた。
初年度となる15年度の下げ幅をめぐっては、2.5%以上を求める甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相や経済産業省と、税収減を懸念し小幅にとどめようとする財務省が対立した。最終的に景気の底上げを優先し、財源確保は段階的に実施して減税を先行させることになった。
ただ安倍晋三首相は、15年度の基礎的財政収支の赤字を10年度比で半減させる財政健全化目標を達成する方針も掲げている。決着した下げ幅は、象徴的な「2.5%」を超える水準としつつ、財政目標を達成できる範囲に調整した。
15年度に着手する財源確保の柱は、赤字企業も課税される外形標準課税の拡充だ。大企業を対象に法人事業税に導入されている外形課税の割合を2年間かけて倍増させる。稼ぐ力のある企業は税負担が減る一方で、赤字企業は増税となって「優勝劣敗」に拍車が掛かる可能性がある。
黒字を過去の赤字で差し引いて納税額を減らせる「欠損金の繰り越し控除制度」も縮小する。大企業を対象に、黒字から差し引く限度を現在の8割から5割に段階的に減らす。企業に早期の収益改善を促す見直しだ。
15、16年度の先行減税の規模は総額4200億円にのぼり、安倍政権は企業の賃上げを後押ししたい考えだ。賃上げ企業には「所得拡大促進税制」の適用要件を緩和する。地方の企業移転を促す税制も導入し、地方の雇用創出を目指す。
16年度以降の税制改正でも法人税改革を継続する。大企業の外形標準課税の追加拡充のほか、設備投資減税の縮小、減価償却制度の見直しなどが焦点となる。
中小企業への課税強化も検討課題に挙がるが、反発が強いため後回しになりそうだ。(SANKEI EXPRESS)