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韓国の「ゆがみ」あぶり出したナッツリターン

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韓国の「ゆがみ」あぶり出したナッツリターン

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12月17日、ソウル西部地検に出頭し、記者団に囲まれる大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョナ)前副社長=2014年、韓国・首都ソウル(共同)  【国際情勢分析】

 大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョナ)前副社長(40)がナッツの出し方に腹を立て自社機を引き返させた「ナッツリターン」事件は、趙氏らの逮捕状が請求されたほか、調査に当たった韓国国土交通省の調査官が逮捕される事態になった。韓国メディアは、財閥企業の世襲支配や官民癒着といった社会・経済構造の“ゆがみ”に加え、旅客船沈没事故と絡め、朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)の指導力にまで疑問の目を向け始めた。

 財閥体制自体が問題

 米ニューヨークの空港で5日、事件は起きた。大韓航空機のファーストクラスで、趙氏が客室乗務員のナッツの出し方を叱責した上で、乗務員や機内サービス責任者に土下座を迫り、責任者を降ろさせた。趙氏は大韓航空を傘下に持つ財閥グループの3世で、それをかさに着た振る舞いが韓国国民の怒りに火を付けた。

 韓国最大手紙、朝鮮日報(電子版、2014年12月21日)はコラムで、「国民のおそらく99.9%がファーストクラスに座ったことなどない」と皮肉った上で、「国民は誰もが自分が土下座させられたように感じたはずだ。あまりに多くを持つ者、その強欲さを隠さない少数に膝を屈したように感じた。そのため、大多数の国民は怒りが収まらないのだ」と指摘した。

 批判はまず、世襲体制の財閥企業が韓国経済を動かす構造的問題に向かった。別の韓国紙、ハンギョレ(電子版、2014年12月15日)は、「事件の本質を、単にきちんと教育されなかったオーナー一族の子息らの悪行やゆがんだ心の問題に置き換えることはできない。彼らにゆがんだ自意識を植え付ける現在の財閥体制自体が根本的な問題だ」とコラムで論じた。

 「官民癒着」もやり玉に

 朝鮮日報(2014年12月16日)は別のコラムで、「財閥3、4世の経営参加が本格化した今、オーナーの子供らのとんでもない行動で企業全体を台無しにする可能性はますます高まっている」とし、大企業のその社会的リスクに対する備えが「ゼロに近い」と警鐘を鳴らした。中央日報(電子版、2014年12月25日)はコラムで、事件について「韓国経済のためにはよいことだ。3、4世オーナー経営者が抱えるリスクをありのまま見せたからだ」と開き直ってみせた。

 大韓航空と事件を調べる国交省の“癒着”もやり玉に挙がった。東亜日報社説(電子版、2014年12月16日)は、国交省の航空安全監督官16人中14人が大韓航空出身という「過度の偏向ぶり」を挙げ、「一つ釜の飯を食べた仲で、調査結果が公正に出るか疑問だ」と提起。国交省が当初、「趙氏まで聴取する必要はない」との態度だったとし、「大韓航空にほぼ牛耳られている国交省に真相究明ができるか疑わしい」と断じた。案の定、大韓航空OBの国交省の調査官が調査内容を大韓航空の常務に漏洩(ろうえい)したとして26日、検察に逮捕された。

 まともなリーダー不在

 運航会社と監督官庁の癒着は、犠牲者300人以上を出したセウォル号沈没事故でも問題視されたことで、セウォル号との共通点を指摘する論調も目立つ。ハンギョレは26日、「船長が乗客を捨てて脱出したのも、機長が副社長の命令で飛行機を戻したのも同じ犯罪行為だ」と乗客の命を預かる機長の責任を問うコラムを掲載した。

 批判の矛先は、国のかじ取りを担う朴大統領にも向かい、コラムは、沈没事故当日の朴大統領の7時間にわたる動静が曖昧なままであることや、それを報じた産経新聞前ソウル支局長が告発された問題にも触れた。その中で、「船長も機長も副社長も大統領も全てリーダーシップ不在のまま沈没した。まともなリーダーがいない韓国には何一つまともなことができない」と強調した。

 セウォル号沈没に始まり、ナッツリターン騒動が収まることなく終わろうとする2014年を振り返ってこうも嘆いた。「今年ほど韓国が恥ずかしいと思ったことはない」(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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