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経済
製造業「脱中国」 国内回帰が鮮明
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経済3団体共催の新年祝賀パーティーで安倍晋三(しんぞう)首相(右から2人目)は団体トップらに賃上げや投資増を訴えた=2014年7月6日、東京都千代田区(寺河内美奈撮影) 国内企業が中国から国内生産に切り替える動きが広がってきた。電子部品大手のTDKが、中国で生産する部品の3割を段階的に国内に移管する方向で検討に入ったほか、パナソニックも縦型洗濯機や電子レンジを国内生産に順次切り替える。円安の加速や人件費の高騰で、中国生産のメリットは低下しており、地方創生を掲げる政府にとっても、企業の国内回帰は追い風となりそうだ。
TDKは、中国で25の主要生産拠点を持ち、売上高全体の4~5割程度が中国生産とみられる。このうち、スマートフォンや自動車向け電子部品の生産を順次国内生産に切り替える。TDKによると、中国の工場での従業員の定着率が落ちているほか、人件費も高騰している。こうしたリスクを軽減するため、秋田県や山梨県にある既存工場の遊休施設を活用する方向で検討している。
パナソニックも、中国で生産し日本で販売する家電を国内生産に順次切り替える。縦型洗濯機を静岡県袋井市の工場、電子レンジを兵庫県神戸市の工場に生産移管する。すでに家庭用エアコンなどは滋賀県草津市の工場への移管を一部で始めている。
パナソニックは中国を含め海外で生産する家電約40機種を国内に切り替える方針だが、その背景には円安の影響がある。現在の為替相場は1ドル=120円前後の水準だが、海外で生産した製品を輸入すると採算がとれず、業績面での減益が避けられないという。
一方、シャープの高橋興三社長も6日の記者会見で、テレビや冷蔵庫の生産の一部を栃木県矢板市や大阪府八尾市の工場に移す方向で検討を始めていることを明らかにした。高橋社長は「1ドル=120円で(国内生産に)移した方がよいものは出てくる。工程数の少ないものから移したい」と述べた。
このほかには、ダイキン工業が家庭用エアコンの一部生産を中国から滋賀県草津市の工場への移管を完了した。ホンダも国内販売する原付きバイクの一部を熊本県大津町の工場への移管を検討中だ。
≪「好循環主役に」賃上げ前向き相次ぐ≫
経団連など経済3団体共催の新年祝賀パーティーが6日、都内のホテルで開かれた。安倍晋三首相はあいさつの中で、法人税減税に関し、「今後もさらに(引き下げ幅の)上乗せを目指していきたい。これは皆さんにかかっている」と述べ、出席した大手企業の経営者らに賃上げや設備投資増などを改めて訴えた。
法人税の実効税率をめぐっては、2015年度与党税制改正大綱に2年間で3.29%引き下げる方針が盛り込まれた。首相はあいさつで、「(実効税率の)引き下げによって、経済の成長に成果が出てくることが大切だ」と強調。
これに先立ち、経団連の榊原定征(さだゆき)会長も「経済界としては成長戦略の主役であることを十分自覚し、積極経営を通じ企業収益を拡大し、設備投資や雇用の増加、賃金の引き上げにつなげたい」とあいさつし、首相と共同歩調をとった。
出席した経営者からは、「半導体事業に続き、社会インフラやヘルスケアなどにも投資したい」(田中久雄・東芝社長)「賃金の具体的な上げ幅は決まっていないが、ベースアップ(ベア)を軸に検討している」(永井浩二・野村HDグループCEO)など、前向きなコメントが並んだ。
ただ、昨年4月の消費税率引き上げに伴う需要の反動減や急激な円安など、アベノミクスは正念場にあるとの見方もあり、「(賃上げは)構造改革中だから全く関係ない」(鈴木純・帝人社長)など慎重な意見もあった。
パーティーの後、経済3団体のトップがそろって記者会見。日本商工会議所の三村明夫会頭は「経済の好循環を実現するために、今一番大事なのは、経営者がデフレマインドから脱却すること」と述べ、大手企業を軸に積極経営への転換を促した。
また、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は「業績の良い企業が、好循環をリードすべきだ」と述べたほか、榊原会長も「止まりかけた消費拡大の循環を再び回すためにも、春の賃上げに期待したい」と強調した。(SANKEI EXPRESS)