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経済
不採算24便運休 石垣・宮古は撤退 スカイマーク再生へ新社長会見
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民事再生法の適用を東京地裁に申請し、会見するスカイマークの井手隆司会長(左)と有森正和社長(右)=2015年1月29日午前、東京都大田区の羽田空港(栗橋隆悦撮影) 民事再生法の適用を28日に申請した国内航空3位のスカイマークは、有森正和新社長(58)が29日に東京都大田区の本社で記者会見し、経営再建に向けて不採算路線を一部縮小し、減便も実施する方針を示した。2月1日から3月28日まで、現在の1日152便のうち24便を運休して128便に減らす(水曜日は126便)。3月29日以降の夏ダイヤで石垣、宮古の両空港から撤退し、仙台-福岡線を廃止する。
スカイマークは支援企業探しも本格化させる。支援表明を受けたことを有森社長が明らかにした投資ファンドのインテグラル(東京)に加え、全日本空輸を傘下に持つANAグループなどの航空会社が名乗りを上げる可能性がある。ただ、再建が難航すればさらなる減便や路線縮小に追い込まれる恐れもある。
有森社長は「ご迷惑をお掛けし、心よりおわび申し上げる」と謝罪。「当面の資金繰りのめどはついており、運航に支障が出ることはない」と強調した。不採算路線の縮小、減便に加え、運営コストが高い欧州航空機大手エアバスの中型機「A330」の運航を休止することも示した。
国土交通省は29日、スカイマークに対し運航の安全確保と、旅客への周知徹底を要請した。全日本空輸と日本航空は、スカイマークとの共同運航の実現に向けて協議を継続する方針を示した。
スカイマークによると29日は通常通り運航しており、混乱は生じていないという。来週に債権者集会を開き、裁判所の管理下で運航を続けながら再建を目指す。また、29日に公表する予定だった2014年4~12月期単体決算の発表日を2月5日に延期した。
スカイマークは28日夜の臨時取締役会で民事再生法の適用申請を決めた。西久保慎一氏(59)は経営悪化の責任を取って社長を辞任し、取締役だった有森氏が後任となった。公表した負債総額は約710億円。(SANKEI EXPRESS)
≪LCC台頭で薄れた存在意義≫
電撃的な民事再生法申請から一夜明けた東京・羽田のスカイマーク本社。記者会見に詰めかけた報道陣の前に、いつもなら中央に陣取っているはずの前社長、西久保慎一(59)の姿はなかった。代わって新社長に就いた有森正和(58)が答えた。
記者「西久保前社長はなぜ出席しなかったのか」
有森「西久保社長は退任し、取締役も辞職した。承知していない」
かつては「航空業界の革命児」「空の風雲児」ともてはやされた西久保。IT企業「ゼロ」の創業者として名をはせ、2003年に当時経営難だったスカイマークに私財を投じて35億円を出資。その後、社長に就任し、高収益路線に集約することで経営を立て直した。万年赤字だったスカイマークだが、10~11年度には2年連続で100億円を超える営業利益をたたき出した。
一方、その経営方針が物議を醸したことも少なくない。「客の苦情は受け付けない」といったサービス理念を打ち出してみたり、機長や整備士の相次ぐ退職で大量欠航や整備トラブルを招いた。客室乗務員にミニスカートを着用させ、賛否両論を呼んだこともある。
そんな西久保には絶対に譲れない一線があった。
「今後も独立経営を続ける。そうでなければ、スカイマークの存在意義がなくなる」
経営不振が表面化した昨年以降、西久保はあくまで自主再建にこだわり、出身地である関西のイントネーションでまくし立てることもあった。全日本空輸、日本航空という「2強」に真っ向勝負を挑み、寡占状態だった航空業界に価格競争を仕掛けたのは自分だ、という強い自負心だった。
29日の記者会見で、会長の井手隆司(61)は「第三極として残ることが社会的役割だ」と西久保の思いを代弁した。
スカイマークは“ドル箱”といわれ、2強が「のどから手が出るほどほしい」(関係者)羽田発着枠を36枠抱えるが、井手は「36枠を維持しないと既存の航空会社で分け合うことになり、運賃は上がる」と述べた。
だが、価格競争だけが「第三極」の存在意義なのか。それならば今は、スカイマークをしのぐ低価格を売りとする格安航空会社(LCC)がある。航空自由化の名の下、表向きはスカイマークを支援してきた国土交通省からも「LCCが台頭し、2強に対抗する第三極の役割が薄れつつある」(幹部)との声が上がる。
スカイマークが今後も第三極として存続するには、支援企業の選定が最大のポイントになる。2強ではなく、かつて提携交渉を試みたマレーシアのエアアジアのほか、航空機のリース会社、投資ファンドなどが支援に名乗りを上げれば、かろうじて第三極の地位は維持できることになる。だが、今回の民事再生法の申し立て代理人の一人はこう言う。
「第三極を守りたいという意思は尊重したいが、それは決して2強を排除した上で支援企業を探すということではない」
=敬称略(田端素央/SANKEI EXPRESS)