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無国籍なダンスミュージック フライト・ファシリティーズ、クラップ!クラップ!
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2人組のエレクトロニック・ユニット、フライト・ファシリティーズ=2014年9月11日(提供写真) ロックやポップスに比べれば、歌詞の比重が少ないダンスミュージックは国籍は問わない。とはいえ、表舞台に出てくるのは、どうしても英米のアーティストが多いのが現状だ。マーケットの大きさにも比例してくるので、この傾向は当然かもしれない。ドイツのテクノや北欧のエレクトロニカなどが脚光を浴びることもあるが、それ以外はマイナーな存在だ。しかし、そんなシーンにどかんと風穴を開けてくれそうなクリエーターが登場している。今回はそんな2組を紹介したい。
まずはフライト・ファシリティーズ。オーストラリアのシドニーで結成されたヒューゴとジェームズによる2人組のエレクトロニック・ユニット。活動を開始したのは2009年なので、キャリアはそれなりにあるのだが、ようやくファーストアルバム「ダウン・トゥ・アース」が発表された。カイリー・ミノーグとの共演など話題性も十分だが、彼らの本質はクールな質感のサウンドだ。多くのシンガーをフィーチャーしても、ヒップホップ、ハウス、ファンクなど多様なジャンルを組み合わせても、独特のひんやりとした感触は変わらない。ジャケット写真を飾る東京の夜景にも似合っている。踊ってもよし、落ち着いて聴いてもよしの心地いい傑作だ。
もうひとつ注目したいのが、クラップ!クラップ!という変わった名前のクリエーター。イタリア人トラックメーカーが作るサウンドは、とにかくユニークのひとこと。土着的な雰囲気の音色と最新のダンスミュージックが混じり合った不思議な世界を構築している。ジュークやベース・ミュージックといった最先端のビートをベースにしながらも、1980年代風のシンセサイザーが効果的に使われていたり、アフリカやアジアの民族音楽のエッセンスをさりげなく挿入したり、何が飛び出すかわからない驚きに満ちている。また、アルバム全体が架空の島における物語をコンセプトにしており、それぞれの楽曲ごとに解説が付けられているのも面白い。トライバルな世界に身を委ねながら、冒険気分を味わうのもいいだろう。いわゆるクラブ・ピープルだけでなく、ワールドミュージック好きにもアピールする内容に思わず感嘆させられる異色作だ。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)