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J民謡ニューウエーブ 木津茂里、笹久保伸

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J民謡ニューウエーブ 木津茂里、笹久保伸

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民謡歌手、太鼓奏者、木津茂里(きつ・しげり9)さん=2014年6月13日(提供写真)  「民謡」という言葉を聞いたとき、どのようなイメージが思い浮かぶだろうか。おそらくほとんどの人が、年配の人たちが歌う古くさい音楽を連想するはずだ。ケルト音楽や南米のフォルクローレなどはポップスとして受け入れられているというのに、日本では沖縄民謡の一部を除くと、絶滅危惧種と言っていいほど日常で聴く機会がない。しかし、この数年、民謡に新たな波が生まれつつある。ここではニッポンの民謡を生き返らせようとしているアーティストを紹介しよう。

 伝統とモダンな聴きやすさ

 木津茂里は、いわゆる正統派の民謡歌手だ。父親が尺八奏者だったこともあり、幼い頃から三味線や太鼓を学び、各地の民謡ステージに立ってきたたたき上げでもある。狭い世界に埋もれていてもおかしくないのだが、彼女は視野が広い。津軽三味線の巨匠・澤田勝秋と「つるとかめ」というユニットを組んだり、細野晴臣や坂田明といったジャンルにこだわらない意外な共演も数多い。新作「SHIGERI BUSHI」も驚きの一枚だ。リトル・クリーチャーズの青柳拓次がプロデュースを手がけ、細野晴臣や沖縄の大島保克による書き下ろし曲が「炭坑節」などの民謡と違和感なく並んでいる。アコースティックなアレンジに乗せたコブシ回しは、伝統を重んじながらもモダンで聴きやすいし、とにかくすがすがしい印象が残る民謡アルバム。現在進行形の音楽と断言しても異論はないはずだ。

 ギターで紡ぐ土着と実験性

 もうひとり紹介したいのが、ギタリストの笹久保伸。彼はクラシックギターを学んだ後、単身ペルーに乗り込み現地の音楽家との共演によって修業したという異色のプレーヤーだ。帰国後は現代音楽や南米音楽をベースに先鋭的な作品を作り続けている。新作「秩父遙拝」を聴くと、あらためて彼の振り幅に驚かされるだろう。拠点である埼玉県秩父に伝わる仕事歌を掘り起こし、独自の解釈で再現しているのだ。エレクトリックからアコースティックまで駆使したギターと、初めて自ら歌ったというボーカル。それらがまるで機を織るように絡み合い、土着性と実験性が浮き彫りになった奇妙な音楽に仕上げている。もはや民謡の枠を超えたアバンギャルドなサウンドは、プログレッシブロックのファンにも聴いてもらいたい。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS

 ■きつ・しげり 民謡歌手、太鼓奏者。幼少時から三味線や太鼓に親しみ、民謡番組などで活躍。2002年に津軽三味線の名手である澤田勝秋とユニット「つるとかめ」のアルバムをリリース。海外での公演も多数行う一方、細野晴臣をはじめジャンルを超えた共演も多い。

 ■ささくぼ・しん 埼玉県秩父市を拠点に活動するギタリスト。2004年から南米ペルーで修業し、多くの音楽家と共演。帰国後は本格的なアンデス音楽から、作曲家・藤倉大との共同制作による現代音楽にいたるまで幅広く活動。また「秩父前衛派」を名乗り、アートの分野でも活躍している。

 ■くりもと・ひとし 音楽&旅ライター、選曲家、ビルボードライブ企画プランナー。2年間の中南米放浪の経験を生かし、多彩なジャンルで活動中。情報サイト、All Aboutでアルゼンチンのガイドを担当。最新著書は「アルゼンチン音楽手帖」。

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