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ギタリストが奏でる「旅の記憶」 キケ・シネシ、ビル・フリゼール
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アルゼンチンを代表するギタリスト、キケ・シネシ=2012年5月19日(提供写真) 旅の記憶というものは、芸術家たちの想像力をかき立てる。作家であれば紀行文、映画の世界ではロードムービーと、いずれもひとつのジャンルとして成り立っているくらいだ。音楽に関しても、インスピレーションが湧くという意味においては同様ではないだろうか。このたび、2人のギタリストが、そんな旅の時間と空間をテーマにアルバムを発表した。
アルゼンチンを代表するギタリスト、キケ・シネシによる2枚組大作「シエテ・スエニョス/ファミリア」は、われわれ日本人にとってとてもうれしい企画だ。というのも、彼が2年前に初めて日本ツアーを行った際の思い出を、7つの楽曲にしたためているから。姫路、名古屋、山形、東京、岡山、福岡、京都という7都市の印象を、彼の特徴である7弦ギターを駆使し「7つの夢」と名付けて奏でていく。クラシック、ジャズ、フォルクローレ、タンゴといったさまざまなジャンルの音楽を取り込んだ彼のギター音楽は、繊細でメランコリックでひたすら美しい。たんなる風景ではなく、その場で出会った人々との交流が影響していることもあって、どこか温かみが感じられるのも特徴だ。家族をテーマにした作品群と合わせて、さざ波のようにしなやかなギターの調べに身を委ねてほしい。
ビル・フリゼールもユニークなギタリストといっていいだろう。アメリカ的であることにこだわり、ジャズをベースにしながらもフォークやブルースなど、「アメリカーナ」なプレーでワン・アンド・オンリーのスタイルを築き上げてきた。そんな彼が旅するのは、時空を超えたタイムトリップ。新作「ギター・イン・ザ・スペース・エイジ」では、1950年代から60年代に生み出されたロックのカバーを中心に選曲されている。ベンチャーズの「パイプライン」やバーズの「ターン・ターン・ターン」、ビーチ・ボーイズの「サーファー・ガール」といった有名曲を、原曲が持つノスタルジックな時代感を大切にしながらも独自の解釈によるバンドサウンドで再構築。どこか懐かしさを感じさせるオリジナル曲も秀逸だ。誰もが宇宙旅行を夢見ていたあの頃を想像しながら、当時のロックンロールの残り香を楽しみたい一枚。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)