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「グーグルグラス」ゼロから再挑戦 “iPod生みの親”研究開発乗り出す
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米グーグルが、1月19日にテスト版の発売を中止した眼鏡型のウエアラブル端末「グーグルグラス」について、全くの別物として作り替えるための研究開発に入ったことが10日までに分かった。
開発の中心は、米アップルの携帯型デジタル音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」の生みの親で、グーグル傘下となったベンチャー企業の創業者、トニー・ファデル氏(45)が担う。
盗撮やプライバシー侵害のリスクに加え、心身への悪影響も指摘され、グーグルはいったん、グーグルグラスの製品化は不可能と判断したが、かつてのライバルの知恵を借りて再挑戦する。しかし完璧主義者で知られるファデル氏だけに、製品化に成功するまでには相当な曲折がありそうだ。
欧米メディアの報道によると、ファデル氏は、昨年5月からグーグルグラス計画を率いる米有名女性宝飾デザイナー、アイビー・ロス氏の力を借り、ゼロから再設計するという。
ロス氏は米ハーバードビジネススクールで経営学も学んだ才媛でもあり、自身がデザインした宝飾品は米スミソニアン博物館など世界の12の美術館に永久展示されている。
ファデル氏は米紙ニューヨーク・タイムズに「初期のグーグルグラス開発の努力で、われわれは突破口を開くとともに、消費者や企業にとって何が重要かを学ぶこともできた」と語り、「未来のグーグルグラスのために、チームのリーダーたるロス氏と一緒に働けることに興奮している」と抱負を語った。
ただ、新たなグーグルグラスの開発はファデル氏が実質的なリーダーを務める、というのがIT(情報技術)業界の見方だ。
アップルでは2006年3月~08年11月までアイポッド部門の担当上級副社長を務め、音楽産業の構造転換の布石となったアイポッドを世に送り出し、成功させた功績は大きい。
ファデル氏は10年5月にアップルを退社し、米でベンチャー企業「ネスト」を設立。11年10月、学習機能を駆使して家庭の光熱費を自動的に節約する画期的なサーモスタットを発売し、注目を浴びた。グーグルはファデル氏の才能とこの企業の将来性に着目し、昨年1月、32億ドル(約3800億円)で買収して、傘下に置いた。
現実世界とネットの仮想世界を融合する未来の機器といわれたグーグルグラスは13年5月、米で技術者向けに1500ドル(約17万8700円)で発売され、その1年後、米英では一般消費者も購入できるようになった。
しかし、価格の高さやプライバシー侵害問題などが次々露呈。米では着用者が「グラスホールズ(眼鏡バカ)」と嘲笑された。グーグルは、こうした悪いイメージの払拭には白紙の状態から再開発を行うしかないと判断したようだ。
とはいえ、新しいグーグルグラスのお目見えはまだまだ先になりそうだ。ファデル氏のアドバイザーのひとりはニューヨーク・タイムズ紙に「彼は製品づくり一筋の男なので、完璧な商品ができない限り発売はしない」と断言。
ファデル氏が不完全な商品をテスト版として販売したグーグルの商法を否定的にみていることを示唆した。(SANKEI EXPRESS)