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【ウクライナ情勢】東部で散発的交戦 互いに違反非難 ウクライナ停戦発効

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【ウクライナ情勢】東部で散発的交戦 互いに違反非難 ウクライナ停戦発効

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2月14日、ウクライナ東部ドネツク近郊で、破壊された建物の近くを歩く女性=2015年(ロイター)  ウクライナ東部の政府軍と親ロシア派武装勢力の紛争で15日午前0時(日本時間15日午前7時)、ウクライナとロシア、ドイツ、フランスの4カ国首脳が12日に合意していた停戦が発効した。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領(49)は、これに合わせて全ての政権側部隊が戦闘を停止するよう命じた。しかし、親露派が政府軍の数千人を包囲しているとされる東部の要衝デバリツェボでは交戦が伝えられるなど、死者5300人超を出した紛争が終結に向かうかは全く予断を許さない。

 合意の対象外を主張

 ポロシェンコ氏は軍参謀本部の会議で「和平プロセスを始める最後の機会が損なわれないよう強く望む」と述べ、即時停戦を命令。親露派組織「人民共和国」も停戦を宣言したが、デバリツェボの包囲線内はすでに支配領域で停戦合意の対象ではないと主張している。

 ウクライナ軍は15日、「停戦は全般的に順守されている」としたものの、デバリツェボなどで親露派側から10回の攻撃があったと発表。軍と親露派は相手の停戦違反を批判し合っている。デバリツェボは東部ドネツク州とルガンスク州の親露派支配地域をつなぐ鉄道の要衝で、親露派の出方が注視される状況だ。

 和平合意によると、政権側と親露派は、停戦2日目には前線からの重火器撤去を開始し、14日以内に「緩衝地帯」を設けねばならない。緩衝地帯の幅は砲火器の射程に応じ、50~140キロとされている。緩衝地帯の設置完了から5日以内に捕虜交換も終える。

 失うものない露

 12日の和平合意はウクライナの領土保全を確認する一方、ウクライナには、親露派地域に「特別の地位」を与える新法を年内に制定することなどを求めた。中央政界では対露強硬派が台頭しており、こうした和平合意の「政治条項」はより履行が難しいとみられている。

 親露派の軍事支援を非難されるプーチン露政権には、ウクライナ東部を通じてウクライナの内政・外交への影響力を保持する思惑もある。露政界では「プーチン政権が今回の合意で失うものは何もない。外交上の勝利だ」との見方が出ている。(モスクワ 遠藤良介/SANKEI EXPRESS

 ≪米、対露警戒緩めず 合意の完全履行求める≫

 バラク・オバマ米大統領(53)は14日、ウクライナ東部における紛争の停戦発効を前にウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(60)と個別に電話協議し、東部ドネツク州デバリツェボで激化した戦闘への懸念を共有し、12日にウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスの4首脳がまとめた停戦合意を完全に履行することの重要性を確認した。米ホワイトハウスが発表した。

 オバマ氏はメルケル氏との電話協議で、停戦合意を仲介したメルケル氏の取り組みに謝意を伝えた。一方、ポロシェンコ氏はオバマ氏に対し、懸案となっている殺傷兵器の供与を重ねて求めた可能性がある。

 ジョン・ケリー米国務長官(71)も14日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(64)と電話協議し、停戦に先立ってデバリツェボでロシア軍や親ロシア派武装勢力が戦闘を続けてきたことに懸念を表明した。また、ロシアに停戦合意を完全履行するよう求めた。

 これに関連し、米国務省のジェン・サキ報道官(36)は14日、ロシア軍がデバリツェボ周辺に多連装ロケットシステム(MLRS)や自走砲を展開し、ウクライナ軍に攻撃を加えている証拠とする衛星写真を報道機関に向けて公開した。

 米政府は12日の停戦合意後もロシア軍が介入を続けているとして警鐘を鳴らしており、「ロシア軍が大量の火砲とMLRSをデバリツェボ周辺に配備してウクライナ側を砲撃してきた証拠」(サキ氏)を示すことでロシアを牽制(けんせい)した。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS

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