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【Q&A】イエメン政権崩壊 民兵組織が宣言、過激派の聖域拡大
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イエメン中部イッブで破壊された車の周りに集まる武装組織「フーシ派」の民兵=2015年8月14日(ロイター) アラビア半島のイエメンで6日、反政府民兵が政権掌握を一方的に宣言、ハディ暫定大統領率いる暫定政権が崩壊した。
Q イエメンはどんな国なの?
A 人口約2500万人。山岳地帯が多く、アラビア半島の諸国の中では貧しい国だが、海上交通の要衝アデン湾を抱え、隣には巨大産油国サウジアラビアがあり、地政学的に重要だ。城壁に囲まれた首都サヌア旧市街は、世界遺産にもなっている。
Q 民主化運動「アラブの春」の舞台にもなったよね?
A 2011年からの大規模デモで、30年以上にわたり権力を握ったサレハ前大統領が退陣、部下のハディ氏に権限を委譲した。アラブの春での政権崩壊は4カ国目で、独裁体制を交渉で終結させた唯一の例だった。
Q サレハ政権崩壊後に民主化は進んだの?
A 13年3月、民主化プロセスとしてイエメン各勢力の代表500人超が新憲法案などを協議する「国民対話」を開始、14年初頭には国内を6地域に分ける連邦制導入で合意していた。しかし反政府民兵が暫定政権に異議を唱え、14年9月、サヌアに進撃した。
Q 民兵はどんな人たち?
A 武装組織「フーシ派」の民兵だ。アブドルマリク・フーシ氏を指導者とし、イスラム教シーア派系ザイド派に属する。同じシーア派大国イランの支援を受けているとの見方もある。04年から政府軍と断続的に戦闘を繰り広げていた。暫定政権が目指す連邦制で、自分たちの影響力の低下を警戒していたとされる。
Q 暫定政権に何をしたの?
A フーシ派は今年1月20日には大統領宮殿を制圧し、ハディ氏を軟禁状態に置いた。2月6日には議会を解散し政権を掌握したと一方的に宣言。現在の議会に代わる「国民評議会」や政権運営を担う「大統領評議会」の設置を主張した。
Q これからどうなるのだろう?
A フーシ派と、復権を狙うサレハ前大統領の支持者は当初協調しているとみられていたが、フーシ派が「政権掌握」したことで、関係が決裂した可能性が出てきた。フーシ派とサレハ派の対立が激化すれば、さらなる混乱につながる懸念がある。
Q イスラム過激派も心配だね
A イエメンには、フランス週刊紙襲撃事件で犯行声明を出した国際テロ組織アルカーイダ系武装組織「アラビア半島のアルカーイダ(AQAP)」の拠点がある。混乱により政府が弱体化して、政権の影響が及ばない地域が増えれば、過激派やテロ組織の「聖域」が広がってしまうかもしれない。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪アルカーイダ掃討作戦に影響≫
米政府は、イエメンで反政府民兵が政権掌握を一方的に宣言し政情が不安定化したことを受け、首都サヌアにある米大使館を10日に一時閉鎖した。米軍はイエメン南部に拠点を置く国際テロ組織アルカーイダ系武装組織「AQAP」の掃討作戦を続けてきたが、暫定政権との対テロ協力に支障が出るのは避けられない。
米国務省のハーフ副報道官は6日の会見で、反政府民兵が権を掌握したと宣言したことについて「一方的な宣言であり、合意に基づいた政治危機の解決とは言えない」と非難。ハディ暫定大統領が現在も法的に唯一の大統領であり、ザイド派による政権樹立を認めないと明言した。同時に、「米国にとってイエメンでとりわけ重要なのは対テロ作戦だ」と述べた。
一方、国防総省のカービー報道官は10日の会見で「政情不安の結果、(対テロ作戦に)影響が出ているのは確かだ」と述べた認めた。(SANKEI EXPRESS)