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石垣島から 風のまま「ほうける」贅沢
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石垣島=沖縄県石垣市 石垣島へ来る機会があるのなら、日程が短くてもせめて1日、いや半日でも良いので「ほうける」、つまり「何もしない時間」をつくってみてはどうだろうか。
「ほうける」はあまりいい意味で使われる言葉ではない。「ぼんやりする」「ぼける」など知覚の鈍った状態を指す。言葉の前に「遊び」などの動詞が付くと「物事に夢中になる」という意味になる。
旅行とは本来、日常生活を忘れて息抜きをして、家族や友人、恋人などと楽しい時間を過ごすのが目的のはず。でも日本人は短い休みに旅の行程を詰め込み、無理にでもこなそうとする。家に帰ると良かったはずの思い出は消え去り、疲れだけが残ってしまう。
なので石垣島に来たら、無計画で宿を出て、風の吹くまま気の向くまま、ぶらっと出掛けてみよう。クーラーボックスに氷と飲み物を入れ、気に入った砂浜や絶景ポイントで時間の許す限りほうける。潮風や打ち寄せる波の音、虫の鳴き声や穏やかな時間の流れを五感で感じ取ると、日常生活でたまっていた澱(おり)が、身体から抜けていくのが分かる。
せっかくなら近隣の離島群、八重山諸島も訪ねたいと思うかもしれない。西表島に竹富島、小浜島、与那国島まで、それぞれ魅力は尽きない。とはいえ石垣島だけでも一度に全てを周遊できるはずはない。潔く「また来ればよい」という気持ちで日程を組み、日常生活を忘れてほうける時間を組み込もう。メーンは空と海と自然。相手は逃げないし、慌てる必要はない。何もしない日を存分に楽しむ。これが一番のぜいたくだ。
≪自分なりの「絶景ポイント」探して≫
僕は関西から石垣島に移住して数年になる。ダイビングが趣味で通っているうちにほれ込んでしまい、海のそばの絶景ポイントを探して土地を切り開き、家を建てた。いまはフリーで写真を撮りながら、カフェバーを経営している。大した宣伝もしていないのに、おかげさまで国内外から口コミでお客さんが来てくれるようになった。石垣島には、よそ者も温かく受け入れてくれる土壌がある。
そんな「半ばよそ者、半ば地元の人」である僕が、自分なりに石垣島の「ほうける」場所を考えてみた。ふさわしい絶景ポイントは3種類あると思う。
まずは「有名な場所」。誰が見ても美しいと思う、観光ガイドほか各方面で紹介されている名所で、実物を見ると感動が増すのが御神埼の灯台だ。石垣島の西部に位置しており、天気の良い日は西表島に沈む夕日が見られる。そんな日の夜は夕涼みがてら、星空を眺めるにも適した場所だ。
2つ目は「地元の人だけが知るポイント」。個人的に気に入っているのは、いま住んでいる伊原間(いばるま)から見える、海の日の出と移り変わりの激しい空の様子だ。夜空を眺めると天の川を、肉眼でもはっきりと見ることができる。
そこから川平方面へ車を走らせると、浦底湾に面した林道がある。林道を上がっていくと赤い欄干の橋が架かっている。橋から見下ろす風景は、正に絶景。夕暮れに行くと最高の場所だ。
林道を下り、元の道を再び川平方面へ走らせると、左手に八重山ヤシの群落が見えて来る。先を進み、米原海岸への入り口を通り過ぎると、川平方面に向かって右にカーブしている橋がある。橋から海を見下ろす景色も素晴らしい。
3つ目は「一瞬の絶景」だ。車窓からカーブ、あるいは坂を上り切った所、木々の間からかすかに見える、ほんの一瞬だけ目に飛び込んで来る。きれいだからと戻って立ち止まり、じっくり見たり写真に収めると色あせてしまうことが多い。いくつかそんなポイントを知ってはいるが、写真に切り取って紹介できる腕も術もない。記憶の中だけにしまい込むしかない。
心を癒やすのは風景だけではない。僕の家の裏庭にも自生している島バナナ、桃のような香りがする小ぶりのピーチパインなどの果物を、自分でもいで味わえるのも島ならではの体験だ。タイミングが合えば、あの世からの使者が家々を回る儀式「アンガマ」を見ることができるかもしれない。地元の青年グループが島に伝わる文化を絶やさぬよう頑張っている。
まずは石垣島に来て、何でも見てみよう、体験してみよう。そして自分なりの「絶景ポイント」を探してほしい。(フリーカメラマン 永山真治/SANKEI EXPRESS)